あすはひのきになろう

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殺したガールと他殺志願者【感想】

 

2021年9月19日読了。

 

あらすじ

思わず殺されたくなる甘くて歪なラブコメ。第16回新人賞《優秀賞》受賞!


『最愛の人に殺されたい』と願う高校生・淀川水面は、死神を名乗る女から一人の少女を紹介される。
「貴方が殺されたい人ですか?」出会い頭にそんなことを尋ねる少女。名前は浦見みぎり。『最愛の人を殺したい』という願望を持つ少女だった。
互いの望みを叶えるために、二人は協力関係を結ぶ。水面はみぎりに愛されるため。みぎりは水面を愛するため。
「貴方には、私の理想の男性になってもらいます」「……分かった」「殺したくなるくらい魅力的な男性にしてあげますから、覚悟して下さい」
こうして始まった、歪な二人の歪な恋路。病的で猟奇的で不器用な少年少女が最高のデッドエンドを手に入れる物語、開幕。

出典:https://mfbunkoj.jp/product/killme_girl/322008000666.html

 

 

 第16回MF文庫Jライトノベル新人賞《優秀賞》受賞作品。審査員の講評およびコメントは以下の通り(長いので折りたたんでます)。

講評およびコメント

『殺したガールと他殺志願者』は読んでいくとのめり込んで行く魅力がありましたが、序盤に提示される設定が共感しにくいため導入がとにかく弱かった(榎宮祐)

優秀賞の『殺したガールと他殺志願者』は、独特の空気感と文章のセンス、そしてヒロインの可愛さが飛び抜けていました。個人的には結構好きなタイプのお話なのですが、危ういバランスの上に成立している作品であることは確かだと思います。何が本作の強みなのか、ご自分できちんと捉え直してみてください。(さがら総)

優秀賞の『殺したガールと他殺志願者』は挑戦的なタイトルで、読む前は異常性癖の主人公とヒロインに感情移入できるかどうか正直不安でしたが、読み進めているうちに、自然とこの不器用なバカップルを応援していました。二人のイチャイチャした会話がとにかくエモくて悶え転がります。また心情や風景の描写に独自のセンスとこだわりがあるのも高評価でした。(志瑞祐)

『殺したガールと他殺志願者』
 主人公とヒロインのやり取りだけで延々と読んでいられる。得がたい才能。このセンスを、いつまでも磨き続けてほしい。(三浦勇雄)

 あらすじの三分の一までは良いが、それ以降は首をひねらざるを得ない展開ばかり。細かい矛盾、説明不足が多すぎる。すべてが行き当たりばったりで、物語が作者のコントロール下に置かれていない印象が拭えない。また内容の薄さに比してページ数が多すぎるし、そもそもページの配分を間違えている(起承転結の転の先が長すぎる等)。
 全体的に見直す必要のある点は多いが、正しく改稿すれば手堅く纏まる可能性を感じる。台詞のやり取りに時々光るものがあるし、やや無理筋気味ながらサービスシーンを多めに入れる点が個人的に好印象、文章も下手にこねくり回さない分だけ読みやすかった。

 ……以上、審査会に提出した私の講評そのままコピペです。私はこの作品を最優秀賞に推しました。惜しくも最優秀賞とはなりませんでしたが、この作品に対する審査員の評価は総じて高かったです。
 もっとも好評だったのは表現力。ちょっとした比喩表現や言い回しにキラリと光る部分があり、それでいて下手に文章をこねくり回さない。今回の最終選考作品の中ではいちばん読みやすかった。サービスシーンを積極的に入れようとする姿勢もいい。
 キャラ造形はもう一歩、ストーリー構成にもかなり甘いところはありますが、この作者には作家に必要なリズム感が既に備わっています。今後も是非、ご自分の長所を伸ばしていってください。年齢もまだお若いようですし、伸びしろは大いにあると思います。(鈴木大輔)

出典:https://mfbunkoj.jp/rookie/award/result/16/

 

感想

 具体的にどこがどう、と言うわけではないんですが、文章のリズム感?のようなものが独特で、ちょっと慣れるまで時間がかかりました。タイトル通り、殺したい少女と殺されたい少年の変則的なラブコメ的作品です。展開をきちんと見れば、必要なイベントを正しく踏んでいっているはずなんですが、何故か書きたいシーンを適当に並べたような、ツギハギな印象を持ちました。いろいろあった割にはオチが月並みなのも肩すかし感があります。また、殺されたい主人公の方はまだしも、殺したいはずのヒロインからはあんまり「殺したい」欲が感じられなかったのも気になります。

 ただ、ラブコメとしては徐々に二人が距離を縮めるイベントの一つ一つはどれも程よくロマンチックで良かったですし、ストーリーも敵役のピーキーさもあって面白かったです。広く強い支持を得るのは難しそうですが、好きな人にはとことん刺さりそうな気がします。