あすはひのきになろう

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15歳でも俺の嫁! 交際0日結婚から始める書店戦争【感想】

 

2021年9月10日読了。

 

あらすじ

27歳サラリーマン、JC(女子中学生)と結婚します。


「今すぐにここから外に出て、わたしと結婚、したくない?」大手出版販売会社に勤める火野坂賢一(27歳・平社員)は、ある日、初対面の少女に求婚される。怪しすぎる事態にも焦らず、彼は冷静に答え――「わかった。結婚しよう」あれ? 俺今なんて言った!? 動揺している間に少女・君坂アリサの自宅に連れ込まれた賢一をさらなる衝撃の事実が襲う! 「わたし15歳の現役JCだし、法律上結婚できないから大丈夫!」「大丈夫じゃねぇええ!」一方、仕事でも賢一は、カリスマJC・MARIAとの連載企画、企画本を進めていたのだが……? 「ワタシはおじさんでも全然恋愛対象だけどね~」2人の15歳に振り回される日々が始まる!?

出典:https://mfbunkoj.jp/product/15yome/321712001032.html

 

 

感想

 作者は『ココロコネクト』の庵田定夏。前作までは全てファミ通文庫からの刊行でしたが、本作はMF文庫Jからの刊行です。2018年9月にこれの2巻を出して以来新作がなく、昨年5月に開設された本人の公式サイトによれば、新作準備中とのことですが、それからもまる一年音沙汰が無い状態です。

 僕自身も作者のファンではありますが、デビュー作である『ココロコネクト』の後は、率直に言って鳴かず飛ばずといった印象です。『アオイハルノスベテ』は志半ばと言ったところで完結しましたし、その次の『今日が最後の人類だとしても』も本作も2巻で打ち切られたようで、応援したいところですが、もどかしいところです。

 さて、本作は作者のこれまでの作風とはガラッと変わり、いわゆる「おっさん×女子」もののラブコメです。この系統のほとんどはヒロインがJKですが、こちらはタイトル通りJCで、犯罪度がさらに上がっています。そして、ブコメとしては正直あまり面白いとは言えませんでした。キャラクターは記号的かつサブヒロインにあたる女性キャラがむやみに多く、物語の都合上登場している感が強いです。ひとりくらい男性にしても良かったのではと思わされました。また、とってつけたような次巻への引きはこのレーベルの最も顕著な悪い癖です。

 一方で、出版取次業という主人公の職業を存分に活かした物語展開は興味深く、この時代における出版や書店のあり方に関する話は素直に面白かったです。主人公が「炎上恐怖症」である、というのも作者自身のバックボーンを考えると意味深長で、ネット上の姿の見えない大衆の言葉に振り回されながらも自身の信じた道を進む主人公とヒロインにも一定の魅力は感じます。しかしながら、総じて続きも読もうとまで思えるほどの牽引力は感じられず、取り扱う題材が面白いだけにもったいない作品でした。