86―エイティシックス―【感想】
2021年10月2日読了。
あらすじ
“その戦場に死者はいない”――だが、彼らは確かにあそこで散った。
サンマグノリア共和国。そこは日々、隣国である「帝国」の無人兵器《レギオン》による侵略を受けていた。しかしその攻撃に対して、共和国側も同型兵器の開発に成功し、辛うじて犠牲を出すことなく、その脅威を退けていたのだった。
そう――表向きは。
本当は誰も死んでいないわけではなかった。共和国全85区画の外。《存在しない“第86区”》。そこでは「エイティシックス」の烙印を押された少年少女たちが日夜《有人の無人機として》戦い続けていた――。
死地へ向かう若者たちを率いる少年・シンと、遥か後方から、特殊通信で彼らの指揮を執る“指揮管制官(ハンドラー)”となった少女・レーナ。
二人の激しくも悲しい戦いと、別れの物語が始まる――!
第23回電撃小説大賞《大賞》受賞作、堂々発進!
第23回電撃小説大賞《大賞》受賞作品。応募時の名義は「麻里アサト」。受賞時の選評はこちら。
感想
アニメ1クール目を完走した上での読了。エイティシックスはなんで反乱起こさないの?とかなんでお兄さんはシンに執着してるの?とかアニメをさらっと見ただけだと拾いきれなかった設定を理解できたのは良かったですね。
で、アニメとラノベだとやっぱり受ける印象はちょっと違ってて、アニメだと全部のキャラに声と動きがつく分、キャラに対する共感の度合いが高まって、エイティシックスたちが置かれた状況の悲惨さといった、感情面に訴えかけく来る側面が強調されてたように思うんですが、原作だと割とナレ死が多いのもあって、キャラが死んで悲しい、というよりも、一歩引いたところから、共和国の有り様を通じて「こんな荒唐無稽なことありえんだろ」と言い切れないような現実の過去の歴史とか、現在の国際社会とかを皮肉っている印象が強かったです。これがまた絵になると、「こうはならんやろ」の違和感が強すぎて、反発しちゃう部分が大きいように思います。アニメを先に見ている分、どうしてもそっちに引っ張られちゃうんですが、やはり原作の良さを十二分に引き出した、良いアニメ化だったように感じました。
アニメ第1クール範囲外で言うと、終章の駆け足っぷりには驚きましたが、今まで顔を合わせたことのなかった二人が初めて「出会う」(ネタバレにつき反転)場面で締める終わり方も良い。今巻でかなり上手くまとまっているので、続きには不安もありますが、同じくらい期待もさせてくれる作品でした。