あすはひのきになろう

ライトノベルを中心にいろんなコンテンツの感想を記録していきたいブログ

2021秋アニメ振り返り

 やります。核心的なネタバレは避けて書いているつもりですが、ものによってはネタバレがあるので、未視聴作品の感想を読む際には十分ご注意下さい。あと負の意見もあります。並びは五十音順で、スタッフとかの補足情報も併記していますが、興味ない人適当には飛ばしながら読んで下さい。人名のリンクはWikipediaかアニメ@wikiに飛ばしています。

 意欲的なオリジナル作品も多く、毎週様々な作品を楽しく見られたものの、総じて手放しで褒められる作品に乏しく、満足感が高かったかと言われると答えるのが難しいクールでした。

 

 

 

異世界食堂

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異世界食堂2 | アニメ動画見放題 | dアニメストア

 週に一度、土曜日*1だけ異世界に扉がつながる食堂を舞台に、料理を通じた異世界との交流が描かれます。「小説家になろう」発の犬塚惇平によるヒーロー文庫ライトノベルが原作。2017年夏クールに1期が放送されました。

 スタッフ陣は監督・シリーズ構成の神保昌登(『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ ツヴァイ!』『俺がお嬢様学校に「庶民サンプル」としてゲッツされた件』)を除いて大幅に交代。アニメーション制作がSILVER LINK.から『キラキラハッピー★ ひらけ!ここたま』『オッドタクシー』(共同)のOLM Team Yoshioka*2に、キャラデザは『「庶民サンプル」』の佐野隆雄と『ストライク・ザ・ブラッド』の佐野恵一から『たまごっち!』『かみさまみならい ヒミツのここたま』(いずれも共同)の東海林康和に変わっています。

 内容的には1期とほとんどやってることは変わらないので、1期がつまんなかった人はつまんないだろうし、面白かった人は2期も面白かったのではないかと思います。目新しさはありませんが、安定感があり、飯も美味そうでのんびり見るにはちょうど良かったです。ストーリー要素はかなり希薄ですが、例えば4話だとAパートが本当に子どもの話で、続くBパートが子どもみたいな見た目の種族の話、みたいな緩い連関がある回もあって、そういうのに気づけると嬉しかったですね。あと種族・年齢問わずあらゆる客が、完全初見であるはずの異世界の料理に対して流暢に食レポ始めるの、わかってても笑っちゃうんだよな。こんだけ色んな客来るなら一人くらい煉獄さんくらいの語彙力の人来ても良くない?

ヴィジュアルプリズン

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ヴィジュアルプリズン | アニメ動画見放題 | dアニメストア

 音楽クリエイター集団「Elements Garden」の代表・上松範康が原作を手がけるオリジナルアニメ。ヴァンパイアたちが組んだユニットがライブパフォーマンスでバトルする、みたいな話。またの名を『吸血鬼すぐ歌う』。

 総監督は『七つの大罪 戒めの復活』『SHAMAN KING』の古田丈司、監督は『戒めの復活』副監督の田中智也、シリーズ構成は『オーバーロード』『ノー・ガンズ・ライフ』『戦闘員、派遣します!』の菅原雪絵。キャラ原案はドラマCD『Are you Alice?』やゲーム『GOD EATER 2』のコミカライズを担当した漫画家の片桐いくみが、キャラデザは『ヒカルの碁』『黒執事』の芝美奈子が手がけています。制作は『ソードアート・オンライン』『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』Rhyme Anima『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』のA-1 Pictures

 1話がほぼ30分MV垂れ流しみたいなつくりで、全然世界観の説明とかがなく、「またよくわからんのが来たな……」と思ったんですが、見続けるうちに思いのほか主人公を中心にしっかりとしたストーリーラインがありました。ライブシーンのはずなのにえらいしっかりした戦闘をしていた6話とか、マヨネーズで別人格が現れる8話とか、トンチキの波動が強いとこはしっかりトンチキしてましたが……。世界観は最後までふわっとしてましたが、キャラの絡みを中心に、音楽・歌という題材にきちんと取り組んでる感じがして、これはこれでありかも、となりました。まぁメインターゲットは女性っぽいのでさすがにめっちゃハマった、というわけではありませんが意外と結構楽しめた気がします。各ユニットのキャラも、それぞれ1クール終わる頃にはなんとなくどんな奴かつかめるくらいにはしっかり見れて良かった*3

 曲もちょいちょい良いのあったんだけど、ヴィジュアル系に馴染みが薄いのもあって、歌詞とかライブの絵面とかシュールなとこが目立ってましたね。ニコニコで見てると案の定空耳歌詞だらけなんですけど、実際の歌詞も大概空耳歌詞と良い勝負できるくらいには癖が強い

86―エイティシックス―(第2クール)

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86―エイティシックス― | アニメ動画見放題 | dアニメストア

 2021年春クールの第1クールに続く2クール目。主要スタッフに変更なし。「特別偵察任務」を言い渡されたシンたちが辿り着いたギアーデ連邦でのその後が描かれます。

 サビで操縦席に座るエイティシックスの面々が次々と切り替わるカットが印象的なOPの絵コンテ・演出は山本健。直近では、Cygames10周年を記念するコーポレートアニメーションムービー『Follow Your Fantasy』の監督も務めています。amazarashiの歌う「境界線」のメッセージ性の強い歌詞にも要注目です。

www.youtube.com

 内容以前に、途切れ途切れ放送なのがかなりのハンデでした。11月に入ったあたりからかなりスケジュールがガタガタになってて、18話19話と立て続けに落としたあと、特別編成*4でまた1週空く、といった感じで実質隔週放送になっていました。結局ラスト(?)の22話、23話の放送は3月までお預けのようです。もちろん残念は残念なんですが、後々見る人には関係のないことですし、個人的にはクオリティが著しく下がる*5よりはマシかなぁという立場です。戦闘シーンも含め、作画的にはかなり頑張っている方の作品だと思うので。

 内容的には、今クールも暗喩的な画面作りが目立ちました。同時に、OPにも顕著ですが、ラストカット等での赤や青の色の使い方も印象的でした。レギオンとの戦闘も、スピード感はあるのですが、きちんと何をやっているのかが分かる軽やかさがあって、安定していました。ストーリーとしては、束の間の平穏を得たシンたちが、どのような気持ちで再び戦場に戻ることを選択したのかという気持ちの描かれ方が丁寧で、また超巨大な敵に対して総力戦を挑むという展開が熱い。シン、フレデリカ、キリという三者の関係性もそれぞれ少しずつ重ねられるところがあって良かった。共和国との違いを強調しつつも、結局はエイティシックスを線上に出さざるを得ず、また彼らを真に理解できない連邦という国家の描かれ方も面白い。ぱっと見感じの良いおっさんと思わせて実はどっか狂ってそうな大統領をはじめ、新キャラも魅力的でした。ただ、レーナの出番が少ないのは寂しいですね。めちゃくちゃ良いところで21話終わったので、レーナの再登場を願って、次話を楽しみに待ちたいと思います。

 

王様ランキング

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Amazon.co.jp: 王様ランキングを観る | Prime Video

 エコーズ株式会社の運営するオリジナル漫画投稿サイト「マンガハック」にて連載中の十日草輔による漫画作品が原作。単行本はKADOKAWAのビームコミックスより刊行中。耳が聞こえず言葉も話せない王子・ボッジが、唯一彼の言葉を理解できる友人・カゲとともに、立派な王を目指して冒険の旅に出るお話。

 監督は『ブギーポップは笑わない』副監督の八田洋介、副監督は『進撃の巨人』シリーズでアクション作監(共同)を務める今井有文。シリーズ構成は『僕だけがいない街』『91Days』『歌舞伎町シャーロック』の岸本卓。キャラデザが『東京マグニチュード8.0』の野崎あつこ、サブキャラデザが『ラブライブ!サンシャイン!!』メインアニメーター(共同)の河毛雅妃で、この二人が総作監も務めます。アニメーション制作は『進撃の巨人』『魔法使いの嫁』『Vivy -Fluorite Eye's Song-』のWIT STUDIO

 1話の印象では、ハンデを背負った主人公でお涙頂戴、みたいな意図がそこはかとなく透けて見えてしゃらくさいと感じ、今でも依然としてその印象はあるのですが、それだけではないのが面白かったです。

 1クール見てきて最も印象的なのは、本作におけるキャラクターの多面的な描かれ方です。例えば、最も顕著なのはボッジの義母に当たる王妃ヒリング。1話では『シンデレラ』における継母のような典型的な主人公に辛く当たる人物として描かれていましたが、物語を追っていけば、そうした一面的な人物でないことがわかるでしょう。本作はこうしたキャラクターに対する奥行きを演出することに強いこだわりがあるようで、ほぼ全てのサブキャラに対して「第一印象が通用しない」ということが言えます。一方で、これを単純化してしまうと、結局のところ「最初良い人そうに見えた奴は実は悪い奴だし、悪そうな奴は実は良い人」というように法則化できてしまいそうなのは少し懸念です。もちろんここまで極端に単純ではないのですが、キャラの印象操作ばかりが先行するのは避けて欲しいところです。

 ストーリーも面白いです。前述の通り、キャラひとりひとりに注目しても面白いですし、そのキャラの背景がその行動に説得力を持たせているので、展開に違和感を持つこともあまりありません。特に中盤からは純粋に引きが上手く、予想のつかない展開が続き、先の2クール目も楽しみです。特にボッス王の思惑はまだ読めず、何が目的なのか気になるところです。ただ、今のところタイトルのランキング要素が全然話に絡んでこないのはちょっとどうなんだと思わなくもないですが……。

 アニメーションの出来も非常に良いです。ufotableのような美麗なエフェクトや京都アニメーションのような緻密な描き込み、また猛スピードでカメラをグリグリ動かすようなド派手なアクションはありませんが、特に1話のボッジとダイダの殺陣シーンやボッジに蛇が襲いかかるシーン、9話のドルーシの戦闘シーンやヒリングがダイダの居場所を突き止めるシーンなど、力の入った作画をさりげなく物語に溶け込ませているのがとても良いなと感じます。そもそも手話の複雑な手の動きを作画で描いてる時点ですごいんですよね。派手さはありませんが、堅実で素朴なアニメーションの良さがよく表れた作品だと思います。キャラデザや世界観から、懐かしい児童向けファンタジーのような雰囲気が感じられるのも悪くありません。

 しかし、未だに主人公のボッジのことをなかなか好きになれずにいるのも確かです。別に好きじゃなくても楽しく見られてるの良いっちゃ良いんですが、序盤からどうも自分のやりたいことばかりを主張して、周りの環境とか、客観的な視点みたいなのが欠けてるように見えたのをまだ引きずっているところがあります。まぁまだガキだからしょうがないというのもありますし、彼なりに努力しているのもわかるんですが、そこも含めて作品全体から「ボッジは報われるべき可哀想な子で、そんな彼を視聴者も応援しなければならない」みたいな圧を僕が勝手に感じてしまいました。ただ、話が進むにつれて、彼以外の視点が加えられたり、彼自身の努力の方向性も変わったりしていって、そこら辺もある程度考えられてはいるのかなと思います。

 OP・EDもめちゃくちゃ好き。曲も好きだし、特にOPのサビで、ボッジとカゲを先頭に後ろから大人が横一列にならんで行進してくる構図が、先を進む子どもを後ろから見守る大人って感じですごく良い。

海賊王女

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海賊王女|フジテレビの人気ドラマ・アニメ・TV番組の動画が見放題<FOD>

 ネタバレがあります。未視聴の方はご注意下さい。

 18世紀、元王女のヒロインが、侍風の仲間たちとともに、海賊に襲われ命を落とした父の遺した言葉である「エデン」を目指す、みたいなお話。昨年8月に北米のカートゥーンネットワーク・Adult Swimのアニメ枠「Toonami」にて先行放送されたオリジナルアニメです(ソース)。アニメーション制作のProduction I.Gと共に原作にクレジットされ、キャラ原案も手がける中澤一登(『さらい屋 五葉』『残響のテロル』キャラデザ・総作監)、『進撃!巨人中学校』『魔法陣グルグル』撮影監督の髙橋哲也、『BLOOD+』監督・シリーズ構成の藤咲淳一の変名と噂される(ソース不明)、素性不明の藤井サキの3人が連名で監督にクレジットされています。監督が3人もいるのは結構珍しい気がしますね。脚本は映画『PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System』三部作で制作進行や文芸協力としてクレジットされている窪山阿佐子。メインキャラデザに『約束のネバーランド』『歌舞伎町シャーロック』各話作監高橋靖子、キャラデザに『DAYS』総作監(共同)の西村理恵。音楽は皆さんご存知、『魔法少女まどか☆マギカ』『Fate/Zero』『プリンセス・プリンシパル』の梶浦由記。梶浦が手がけるOP「海と真珠」では、いわゆる「梶浦語」も健在です。

 結論から言うと、シナリオに強く不満が残る結果になりました。序盤~中盤は悪くなかったと思います。1話はコミカルなオーバーアクションやジジイのデコボココンビ、おてんばなプリンセス、といった要素からかなりディズニーチックな気配を感じて、「これがアメリカ受けを狙った作り方なんかな~」とか思いつつ、雰囲気自体はそんなに嫌いじゃなかった。甲冑と忍び装束を融合させたみたいな主人公の仲間たちの恰好(リンク先画像参照)も最初はちょっと微妙に感じたけど、まぁこんなもんだろとだんだん慣れていきました。個人的には、中盤で出てきた敵の女海賊たちのキャラデザが、ひとりひとりすごい個性的でめちゃくちゃ良いな~~ってなりました。一人見切れてるけど、下の画像の皆さんです*6

総じて絵はずっと綺麗で、アクションもよく動くし、アニメーションとしてのレベルは非常に高かったんじゃないかと思います。それこそ女海賊の皆さんとか装飾品ジャラジャラの娘とかもいて、かなり作画カロリー高かったんじゃないかと思いますが安定してました。

 ただ、シナリオはかなり怪しくて、そもそもの目的が「なんか今まで忘れてたけど、亡き父の言葉を思い出したのでそれに従ってよくわからん場所を目指す」というすごいふわっとした感じだったので、自ずと展開もふわふわしてて、その割に仲間は結構士気高いし、かと思ったら急に「あの女は魔女!みんな誑かされてるんじゃないか?」みたいな「え、そこ?」って感じの仲違いが起こるし、結構引っかかるところはあったんですが、まだ許容範囲内でした。ただ、中盤女海賊の皆さんがあっさり退場させられたのにはびっくりしてしまいました。再登場するかと思ったら、エピローグまで出番なかったですしね。すごくもったいなかったと思います。あの力入ったキャラデザは何だったんだろう……。で、終盤がかなり雲行きが怪しくなってきて、敵役となるアベルの過去が明らかになる展開は良かったんですよ。映像の説得力も相まって、こりゃ闇堕ちも仕方ないわと思えた。謎解きの大詰めパートも、なんか今までポンコツだった主人公が急に賢くなったな、という違和感はありましたがまぁ流すとして、そこからは首をひねる展開ばかりでした。エデンの正体も結局なんかふわふわしてるし、情状酌量の余地があったとは言え、アベルが思い人の亡霊に導かれてあっさり浄化エンドも「えぇ……」感がある。ラスト2話に関しては完全に超展開に見えました。「この素材でそう話持っていく!?」という悪い意味で衝撃的な展開で、誰をターゲットにしたかったのかわからない。唐突に壮大な設定を持ち出してこられても、こちらはついて行けないし、興味もかき立てられません。これまでの伏線的な要素とのつながりも曖昧だったし、最後らへんはキャラの感情の盛り上がりに置いてけぼりで、醒めた目で見てしまいました。

 多分、制作側はフェナと雪丸のロマンスが一番やりたかったのではと思います。それが、タイトルと1話からこちらが期待する海洋冒険活劇といまいち合致しなくて、中途半端に冒険とか宝探し要素を付け足した結果、この迷走シナリオが生まれてしまったのかなぁなどと思いました。

中澤 (前略) 最初から「少女漫画」を作ろうとは決めていたので、男性としては強い意見を発することができなかったですし。どうも自分は女心がわかってないらしくて(笑)、「ここはおかしくない?」と発言すると女性陣から「そんなところはどうでもよくないですか」みたいに言われるんです。あとは、作中のイベントに「これは必要?」と疑問を呈しても「何言ってるんですか? 絶対必要ですよ」みたいに却下されるとか。

出典:https://www.lisani.jp/0000185118/?show_more=1

www.lisani.jp

 繰り返しますが、アニメーションやキャラデザなど、視覚的な要素はとてもよかっただけに、素材を生かし切れなかったことが残念です。

かぎなど

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かぎなど | アニメ動画見放題 | dアニメストア

 ゲームブランド・Keyの20周年を記念して制作された5分枠のショートアニメ。放送終了後に、第2期が4月より放送開始予定であることが発表されました(リンク)。『Kanon』『AIR』『CLANNAD』『リトルバスターズ!』『Rewrite』『planetarian 〜ちいさなほしのゆめ〜』の6作品のキャラクターが一堂に会し、わちゃわちゃします。ちなみに自分は『CLANNAD』しか見てません。

 アニメーション制作はライデンフィルム京都スタジオ。京都スタジオ名義の作品には『彼女と彼女の猫 -Everything Flows-』(共同)や映画『どうにかなる日々』があります。監督は京都アニメーション出身で、『彼女と彼女の猫』でも監督を務めた坂本一也。キャラデザは『どうにかなる日々』で作監を務めた芳我恵理子。シリーズ構成は直近では『かくしごと』『宇崎ちゃんは遊びたい!』『くまクマ熊ベアー』で同職を務めたあおしまたかし。ゲーム『CLANNAD』のシナリオを担当し、劇場アニメ『クドわふたー』でアニメ脚本家としてもデビューしたシナリオライター、元Key所属で、現在はビジュアルアーツでプロデューサーなどをしている丘野塔也も脚本で参加しています。

 さすがに一作しか知らない状態で見るのは無謀だったかな、と思います。出てくるキャラはほとんど知らないし、パロとかネタとかも原作を知らないから笑いどころが全然分からない。多分基本感動シーンをギャグシーンとしてネタにしてる感じでした。『CLANNAD』と他作の断片的な知識だけではなかなか太刀打ちできませんでしたね。まぁでも雰囲気で十分見れるショートアニメだし、近年なかなかお目(耳)にかかれない声優さんとかもいて、ある程度は楽しめたんじゃないでしょうか。最終話ではあの作品のキャラも出てきたことですし、これなら2期は僕ももう少し理解度を上げてみられるかもしれません。

鬼滅の刃 無限列車編

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テレビアニメ「鬼滅の刃」無限列車編 | アニメ動画見放題 | dアニメストア

 「週刊少年ジャンプ」にて連載されていた吾峠呼世晴の漫画作品が原作。2020年10月に劇場公開された長編アニメを再構成した「無限列車編」と、その続編となる新作テレビシリーズ「遊郭編」の2本立てとなっています。一応秋クール内で遊郭編の放送も始まりましたが、わかりやすく今回は無限列車編のみの感想を述べたいと思います。

 アニメーション制作は本作で一躍有名になったufotable。スタッフは1期から変更なし。無限列車編では、絵コンテ・演出を監督の外崎春雄が手がけるOPと、映画『Fate/stay night [Heaven's Feel] 』三部作監督の須藤友徳が手がけるEDがそれぞれ新規に制作されています。

 原作未読で映画も見に行かなかったので、テレビ放送は個人的にはありがたかったですね。アニメ1話はオリジナルエピソードだったらしく、これくらいあった方が煉獄さんの人となりがよりよくわかって良かったんじゃないかと思います。映像面はすこぶる良いですし、ストーリー自体も普通に(失礼な言い方ですが)面白いんですが、話が基本的にすごい根性論ベースで進んでいくのが興味深いです。魘夢の夢から抜け出す手段とかもろにそうだし、全体的にキャラの言動からそんな空気を感じていて、戦術よりは精神とかそっち方面を重視する感じなんでしょうね。あと負けた鬼をめちゃくちゃ小物臭く演出して主人公たちをよいしょする手法はやや悪趣味に映りました。

 猗窩座の例のシーンが回収できたのも良かったですね。マジであの1ページしか知らなかったので、猗窩座が想像の10倍くらいしつこくて笑ってしまった。ナチュラルに下の名前呼びだし。陽キャか? あと太陽が出た途端スタコラ逃げ出す猗窩座に対して、さっきまでビビり散らしていた炭治郎が急にブチ切れて煽り倒し始めるのもめちゃくちゃ笑った。太陽出たらめちゃ強気になるやん。あのシーンにおける炭治郎の主張、正当なものとして描写されているんですかね? 「鬼殺隊は鬼に有利な夜に戦っている→昼に戦わない鬼は卑怯」ってちょっと強引な気がしますが……。というかそもそも陽光浴びたら死ぬ鬼に昼に戦えってそれもう不戦勝じゃん……って気もするし。

 作風的にあんまり僕が感情移入しながら見られるタイプの作品ではないんですが、画面的に見応えはありますし、話も面白いので続きも楽しみにしたいですね。今見てる遊郭編も良い感じです。

逆転世界ノ電池少女

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逆転世界ノ電池少女 | アニメ動画見放題 | dアニメストア

 「令和」が訪れず、永世昭和が続く世界線の日本を舞台に、サブカル文化を厳しく取り締まる軍と、レジスタンス組織・アラハバキの戦いを描くオリジナルアニメ。今期乱立するロボアニメの一角を占めており、本作には「電池少女」の「トキメキ」をエネルギーとして動く二頭身ロボ「ガランドール」が登場します。

 アニメーション制作は『彼方のアストラ』『地縛少年花子くん』『IDOLY PRIDE』のLerche。監督は『クズの本懐』『アストラ』『花子くん』などのLerche作品で監督を務めた安藤正臣、キャラデザ・総作監は『このはな綺譚』『あそびあそばせ』『アストラ』の黒澤桂子、ガランドールデザイン ・メカニックデザインは『暗殺教室』や『最弱無敗の神装機竜』でメカデザインを手がけ、OVAFate/Grand Carnival』キャラデザ・総作監(共同)を務めた廣瀬智仁。キャラ原案は『化物語』『神のみぞ知るセカイ』『ひぐらしのなく頃に業』キャラデザの渡辺明夫。シリーズ構成は『結城友奈は勇者である』『この素晴らしい世界に祝福を!』『クズの本懐』の上江洲誠

 主人公がホストっていう設定が結構尖ってんなと思ってたんですが、話が進んでみるとなるほど上手くハマっていました。主人公がパイロットとして乗り込むガランドールは、前述の通り電池少女のトキメキがエネルギーなので、要は複数のヒロインのご機嫌取りをしなければいけないわけです。あっちに良い顔してこっちに良い顔してっていう、そういう振る舞いをホストという職に見立てるのが逆に清々しいですし、それを決して否定的に捉えていないんですよね。ここら辺、インタビューを見るにどうも監督のオタク観にも通じているところがあるっぽい。

――安藤監督が感じる、サブカルとは何ですか。
 
安藤:表現として正しいか分からないですけど、軽薄な宗教ですね。
 
――いい表現ですね。何となくわかる気がします。
 
安藤:ハマると宗教という言い回しが良くないような気がしますが、好きになったら押していいし飽きたら次に移ってもいいんです。
 
――エンタメはそれぐらいでとらえてくれればいいんです。好きな間はいくらでも押していいし、飽きたら無理しなくてもいいですから。
 
安藤:複数掛け持ちしてもいいわけですから、八百万です。そこが実はこの作品が問うている、根っこの1つになっている部分でもあります。

出典:https://rooftop1976.com/interview/211225173826.php?page=3

rooftop1976.com

 テーマがテーマだけにノリは非常にオタクオタクしてますし*7、おふざけも結構多く、見てて恥ずかしくなる人もいると思われ、それなりに人を選ぶタイプではあるとは思いますが、個人的には結構ハマれた作品でした。本作では、アニメ、アイドル、ゲームという3つのコンテンツ・3人のヒロインが登場し、それぞれ2話ほどかけて一つのエピソードを描くのですが、特にアイドル回では、自分がやりたいアイドル像とファンが求めるアイドル像の乖離というテーマが描かれていて、そこらのアイドルアニメよりしっかりアイドルしてた気がします。一方で、ここで2話ずつ使っちゃった影響で後半が若干駆け足になってたのが痛し痒し。途中から宗方さんが話し転がすために、ただただヘイトためる役割になってたのもちょっと雑に感じてしまいました*8。欲を言えば、田中さんの正体ももうちょい掘り下げ欲しかった。

 とはいえ、全体的にコミカルに、ノリ強めに押し出しながらも、主人公の過去とか山田の過去とか、割と示唆に富むところもありました。主人公の方はクリエイターが聖人君子とは限らないよってお話だったし、山田の方は好きを叫ぶならそれなりに覚悟が必要だよ*9ってお話で、そこらへんのバランス感覚も優れていたと思います。アラハバキに対して、基本的に真誅軍側が常にハンデ背負ってたり譲歩してたりしてるのも上手いバランスでした。見かけよりずっと芯の通ったアニメだったと思います。特に最終回は、そこまでの内容を上手くまとめつつバトルも熱いものに仕上げていて、めちゃくちゃ良かった。

 画面的には、絵自体は結構綺麗だったんですが、だんだん止め絵が目立ち、11話とかは明らかな作画ミスもあったりしてしんどそうでした。が、最終話はしっかり動いてたんでリソース割く場所は間違ってなかったと思います。

 OPも良かったですね。コンテはみんな大好き松根マサトで、シルエット解禁にSE追加と、オタクの勘所を丁寧に押さえてる。曲の程よい古くささも好き。

 

吸血鬼すぐ死ぬ

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吸血鬼すぐ死ぬ | アニメ動画見放題 | dアニメストア

 「週刊少年チャンピオン」にて連載中の盆ノ木至による漫画作品が原作。高位ではあるものの、些細なことですぐにスナァ……と死んでしまう不死身の吸血鬼・ドラルクと、ひょんなことから彼と同居することになるバンパイアハンターのロナルドを中心に、癖の強い登場人物たちが織りなすハイテンションコメディです。放送後、第2期の制作決定が告知されました(リンク)。

 監督は『魔人探偵脳噛ネウロ』『HUNTER×HUNTER*10神志那弘志。昨年9月に公開された3DCG映画『リョーマ! The Prince of Tennis 新生劇場版テニスの王子様』でも監督を務めています。シリーズ構成は『オーバーロード』『ノー・ガンズ・ライフ』『戦闘員、派遣します!』の菅原雪絵、キャラデザ・総作監は『WWW.WORKING!!』の中野繭子。アニメーション制作は『ちはやふる』『宇宙よりも遠い場所』『Sonny Boy』のマッドハウス。ちなみに踊るOPは『こばと。』『ダイヤのA』『若おかみは小学生!』監督の増原光幸アルマジロのジョンが旅するEDは『WORKING!!!』『WWW.WORKING!!』監督の鎌倉由実のコンテ・演出。

 1話時点だと、デカい声出して勢いで全部押し切ろうとする感じがあまり刺さらなかったんですが、見てるうちに慣れました。この芸風、人によって好き嫌いはかなり分かれそうですが、波長が合えばハマれるんだろうなと思います。どうしても「Y談おじさん」みたいなパワーワードが先行してしまいますが、下ネタ一辺倒ってわけでもないですし、時折差し挟まれるアルマジロのジョン(可愛い)のエピソードが良い塩梅に作品のテンションを落ち着かせてくれたり、あとヒナイチちゃん(ちん!)ほか女性キャラもまぁまぁ登場したりするので、最初の印象より見やすかったです。単純に言葉選びが上手くて笑える場面も結構ありました。画面もある程度安定してましたし、ギャグ枠としては優良な気がします。

 どうでも良いですが、今時男性キャラの脇毛とすね毛が地味にしっかり書き込まれてるアニメ、珍しいんじゃないかと思います。

境界戦機

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Amazon.co.jp: 境界戦機 : 佐藤元, 藤原夏海, 上村祐翔, 石川由依, 市ノ瀬加那, 羽原信義: Prime Video

 主人公の後ろ髪気になる……気にならない?

 OLMと『キングスレイド 意志を継ぐものたち』を共同制作したサンライズの子会社であるアニメーション制作会社・SUNRISE BEYONDと、プラモデルなどを取り扱うバンダイナムコホールディングスの子会社・BANDAI SPIRITSが送るオリジナルロボットアニメ。4つの世界主要経済圏によって分割統治される2061年の日本を舞台に、自律思考型AI「ガイ」と出会った主人公が、人型機動兵器・AMAIM(アメイン)に乗り、日本を取り戻す戦いに身を投じる、というお話。

 監督はSUNRISE BEYONDの取締役も務める『蒼穹のファフナー』『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』の羽原信義、シリーズ構成は『ガンダムビルドダイバーズ』『怪物事変』『スケートリーディング☆スターズ』の木村暢、キャラデザ・総作監は『ガンダムビルドファイターズ』『ゴールデンカムイ』『東京リベンジャーズ』の大貫健一メカニックデザインスーパーバイザーという役職に、多くの自動車、新幹線、トラクターなどをデザインした工業デザイナーの奥山清行が、メカニックデザインに彼がCEOを務めるKEN OKUYAMA DESIGNの小柳祐也がクレジットされています。二人ともアニメ関係のお仕事は初めてっぽく*11、主人公機の「ケンブ」は小柳のデザインだそうです(ソース)。メカニックデザインには他にも海老川兼武*12寺岡賢司*13形部一平*14がクレジットされています。チーフメカアニメーターは、以前『ガンダムビルドダイバーズ』と『ガンダムビルドファイターズ』でそれぞれチーフメカアニメーター(共同)を務めた久壽米木信弥有澤寛

 そこはかとなく思想の強さが伝わってくるシナリオの割に、設定や物語そのものはふわっふわっしていて、そのアンバランスさに危うさを感じる作品でした。最初らへんは『コードギアス』の世界観で初代『機動戦士ガンダム』みたいな話をやってるな、という印象でした。日本が外国に侵略・統治されていて日本人が弾圧を受けている、そんな中でひょんなことからロボットを操縦することになった主人公が戦いに巻き込まれていく……という感じです。が、4話で登場した劣化マチルダさんみたいなエピソードからだんだん雲行きが怪しくなり、「eスポーツの左官部門」だの自治まんじゅう」だの狙っているのか素なのかわからないネタ要素を生み出しつつ、4月に続く!という形で終わりました(リンク)。まず、主人公が戦う動機付けとしての劣化マチルダさんがキャラとしてもエピソードしても雑に処理されてしまった時点でがっくりきましたし、「日本・日本人が不当に諸外国によって弾圧されている」という設定ばかりが先行し、それを裏付ける描写がおざなり*15なのも説得力に欠けます。「卑怯で不誠実な諸外国」と対置される形で示される日本人の善性*16も、どうにも戯画化された曖昧なもののように思われ、なんだかなぁという気持ちになります。また、操縦者いる?というレベルでAIたちが有能だったり、「非公式の自治区」とかいう頭が痛くなるようなよくわからん設定が飛び出してきたりするあたりからもシナリオ・世界観の作りの甘さが露呈しているように感じます。最も危ういのは、主人公たちの属するレジスタンスがほぼ完全に「民衆の味方」的な描かれ方をしているところで、武力を振るう組織を描くうえでの最低限のバランスも取れていない点には、非常に不安を覚えます。

 一方で、シナリオはともかく、ロボット戦は見所もありました。特に7話で描かれたゴーストv.s.北米軍戦は、北米軍の作戦とゴーストの対応能力がぶつかり合う様がとてもエキサイティングですたし、終盤の主人公たちとゴーストの戦いもそれなりに熱かった。というか、ゴーストをめぐるお話は普通に面白いんですよね。あいつどこまで強くなるんだろうというわくわく感があるし。画面的には、省エネしているところも多々ありましたが、上記のような、ここぞという戦闘は力入ってたと思います。

古見さんは、コミュ症です。

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古見さんは、コミュ症です。 | Netflix

 極度の「コミュ障」であるヒロイン・古見硝子と隣の席になった只野仁人が、彼女の「友達を100人作る」という夢に協力し、奮闘するラブコメ。「週刊少年サンデー」にて連載中のオダトモヒト*17による漫画作品が原作。放送終了後、4月より2期が放送予定であることが発表されました(リンク)。

 総監督は『謎の彼女X』『恋は雨上がりのように』、映画『海獣の子供』の渡辺歩、監督は『ベイブレードバースト ゴッド』などベイブレードのアニメで多く絵コンテ・演出を手がけた川越一生。ちなみに監督は最近の深夜アニメだと三越一生名義で『恋する小惑星』5話*18の絵コンテ・演出を担当しています。シリーズ構成は前クール『ヴァニタスの手記』『探偵はもう、死んでいる。』『迷宮ブラックカンパニー』でお世話になった、毎クールおなじみの赤尾でこ。キャラデザ・総作監は『薄桜鬼』『サンリオ男子』『文豪とアルケミスト 〜審判ノ歯車〜』の中嶋敦子。アニメーション制作は『メジャーセカンド』『MIX』『文豪とアルケミスト』を手がけた、児島宏明がプロデューサーを務めるOLM TEAM KOJIMA。スーパーハイセンスなOPは、絵コンテを『ポケットモンスター XY』『XY&Z』監督の矢嶋哲生、演出を監督の川越が担当しています。

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 1話の出来がめちゃくちゃ良かったYouTubeで公式が一部公開しているので、見てみても良いんじゃないかと思います。

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全体的にカメラワークとかキャラの動きとか力入ってんなって感じなんですが、この公式があげているシーンに続く、只野くんと古見さんの黒板でのやりとりのシーンが特に出色の出来。チョークの音、劇伴のタイミング、やりとりのテンポ、ところどころ目線を隠すカット、そして黒板いっぱいに書き込まれた会話を中心に世界が広がっていくようなカメラワーク、全て素晴らしかった。日常系の芝居でここまで強烈に印象に残ったのは、個人的には稀な体験でした。アニメーションで文字演出を多用するのがあまり好きではない質なのですが、このシーンに関しては例外扱いせざるを得ません。筆談が古見さんのコミュケーション手段として重要な要素であることもあり、作品に非常によくハマっていたと思います。

 一方で、そこ以降は最終話に至るまで、作画は安定していたものの、そこまで惹きつけられるところはなかったかな、というのが正直なところです。まぁ掴みに全力投球するのは全然間違ってないとは思うので、それがダメってことではないのですが。ただ、やはり全編通して文字演出が過剰な気はしていて、漫画の一コマに色が付いた、みたいなカットが多かったのには少しアニメーションとして違和感を覚えます。全部なくせとは言いませんが、もう少し要不要に応じて取捨選択すべきだったのではないかと思います。単純に情報量が多いし、画面もごちゃつくし、何より原作の吹き出しやらオノマトペやらを全部アニメに落とし込んでしまうと、もうそれはアニメである必要がないように思われてしまいます。

 僕が古見さんの猫っぽいデフォルメ状態はすごい好きなんですが、作中における美人フォルムがそこまで刺さらないこともあって、めちゃくちゃハマったわけではないんですが、まぁストーリー的にもしっかりラブコメしてましたし、安定していたとは思います。ただ、全体的にキャラがピーキーで、特に山井さんなんか声ついて動き出すといよいよ倫理観……という気持ちになってしまうところもあり、ちょっと引っかからなくもなかったです。只野くんへの周囲の扱い、もう少し良くても良いと思うんだ……。

最果てのパラディン

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 「小説家になろう」発の柳野かなたによるオーバーラップ文庫ライトノベルが原作。「なろう」、書籍版ともに2017年以来更新が途絶えており、作者のTwitterによれば「再起動準備中」だそう。まぁ、音沙汰一切なしよりは大分マシですね。異世界に転生した主人公が、骸骨の剣士ブラッド、ミイラの女神官マリー、幽霊の魔法使いガスという3人のアンデッドに育てられ、成長していくファンタジー作品です。放送終了後、第2期制作決定が告知されました(リンク)。

 監督は『ハイスクール・フリート』『くまクマ熊ベアー』『まえせつ!』の信田ユウ、シリーズ構成は『おちこぼれフルーツタルト』 『IDOLY PRIDE』『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました』の髙橋龍也、キャラデザ・総作監は『オレん家のフロ事情』、映画『新劇場版 頭文字D』三部作の羽田浩二。アニメーション制作は中国の動画投稿サイト・bilibiliの日本子会社であるChildren's Playground Entertainment。主にプロデュース側にクレジットされていた会社でしたが、2020年『はてな☆イリュージョン』『ツキウタ。 THE ANIMATION2』でアニメーション制作を担当し、本作が単独元請3作品目となります。総集編を挟んだうえで最終話はfeel.に投げていたので、まだまだ元請能力は高くないのかな、と邪推。

 一応転生ものですし、俺TUEEE要素もあるんですが、そこらへんのいわゆる「なろう」的なあれこれと、魔法とか神様とかのファンタジー的なあれこれを上手く組み合わせていた気がします。世界観の「昔こういう児童向け海外ファンタジーで読んだぞ」感がすごくて、なんか懐かしい気持ちになりました。ただ、主人公の前世を知らないせいで育ての親に対する彼の気持ちについていけないところがあったり、コメントの補足がないと何が起こっているのかよく分からない展開もチラホラあったり、画面的にもあんまり見所のない凡庸な感じで、全体的に色々惜しいところが目立ってた印象です。そのせいか、割と評価の高い親子のエピソードとスタグネイト戦もそこまで刺さらなかったんですよね……。特に親元を離れてからは、特に目的意識もはっきりしないことも手伝って、パッとしない印象が加速しました。問題を脳筋で解決していく展開も、それはそれで面白いですし、サブキャラもしっかり立ってて悪くはないんですが、それが本作の特筆すべき面白さかと言われるとちょっとズレてくるような気がするんですよね。終盤の闇堕ち展開も、展開的に必要なものとはいえややストレスが溜まります。まぁ、じっくり追っていくことで味が出てくるという作品もあるでしょうし、つまらなかったわけでもないので、続きに期待、という感じでしょうか。

サクガン

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 DeNAを中心に、創通、文化放送毎日放送(MBS)の4社が共同でテレビアニメ制作を行う「Project ANIMA」第1弾。本作は「SF・ロボットアニメ部門」の準大賞*19を受賞した戌井猫太郎『削岩ラビリンスマーカー』が原案。ちなみに、本企画では他に「異世界・ファンタジー部門」大賞の赤坂優月『魔法使いになれなかった女の子の話。』(制作:J.C.STAFF)、「キッズ・ゲームアニメ部門」大賞の品川一『メビウス・ダスト』(制作:動画工房)が控えています。

 人類が暮らすコロニーの外に広がる危険な未開地帯「ラビリンス」を開拓する人々、「マーカー」に憧れる天才少女・メメンプーが、元マーカーの父親・ガガンバーとともにラビリンスに挑む、凸凹父娘の冒険譚を描きます。

 監督・シリーズ構成は『終末なにしてますか?忙しいですか?救ってもらっていいですか?』『Caligula -カリギュラ-』の和田純一。シナリオは『ガーリー・エアフォース』シリーズ構成の永井真吾、『ソマリと森の神様』シリーズ構成の望月真里子、『マクロスΔ』『スーパーカブ』『バクテン!!』シリーズ構成の根元歳三の3人が担当。キャラ原案は漫画『いばらの王』『Dimension W』、アニメ『DARKER THAN BLACK』シリーズの漫画家・岩原裕二、キャラデザは『ガーリッシュ ナンバー』『風夏』『盾の勇者の成り上がり』などで各話作監を務めた望月俊平。アニメーション制作は『戦姫絶唱シンフォギア』シリーズや『マクロス』シリーズのサテライト。

 率直に言って、非常にがっかりな出来でした。百歩譲って原作が長大だとか2期が決まっているとかならまだ理解もできますが、最初からオリジナルアニメを作ること前提でシナリオを先行したうえでお出しされたシナリオがここまでの投げっぱなしジャーマンエンドというのは、ちょっと信じられないです。しかも、中盤とか削れるエピソードばかりだったでしょ……。あまりにお粗末な出来と言わざるを得ません。

 1話の期待感が大きかった、というのも確かにあるとは思います。冒険へ出かけるぞという旅立ちのエピソードとしてのインパクトも強い*20し、世界観もちらつく先行作品こそあれ、ワクワク感は十分にあった。しかし、OPの4人が全員集まった7話あたりからかなり尺に不安が芽生えてきて、それこそ7話も単話としては馬鹿馬鹿しくて決して嫌いじゃないし、むしろ2クールものとかだったら全然歓迎なんだけど、オチまで知って改めて考えるとこれで1話使うのは正気の沙汰じゃない。そこからは、メメンプーの見る謎の夢やシビトたちの動きといった恐らく大筋に関わるだろう話もそこそこに、延々似たような親子関係のエピソードの繰り返しで尺を浪費し、結局広げた風呂敷を畳むことなく終わりました。結局、ガガンバとメメンプーの親子喧嘩を一生見せられていたアニメでした……。思い返せば、ザクレットゥのエピソードも彼女の過去が唐突に開示されて置いてけぼり感あったし、ガガンバもメメンプーも毎回の喧嘩から何も学べてなくて、次話になったらまーた同じような喧嘩をしてて、反省と成長が見られないといった首をかしげるポイントはずっとあったんですよね。原作未読なので、もともとこうなのか、アニメ化にあたってこういう作りになったのかはわかりませんが、用意したせっかくの素材を無駄に消費した非常に残念なオリジナルアニメでした。

 ちなみに画面自体は頑張って動かしてたと思うし、本作のオーティションでデビューされたメメンプー役の天希かのんの演技もめちゃくちゃ良かった。キャラ自体は全員嫌いじゃないんですよね……。あとキメのシーンで入るコーラスつきの劇伴がめっちゃ好き。音楽は『Free!』シリーズでおなじみの加藤達也で、確かにFreeの劇伴もアーアー言ってるやつ多かった気がする。

 

さんかく窓の外側は夜

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さんかく窓の外側は夜|フジテレビの人気ドラマ・アニメ・TV番組の動画が見放題<FOD>

 幽霊の見える書店員・三角康介が、偶然出会った除霊師・冷川理人に強引にコンビを組まされ、様々な事件を追っていきます。冷川は三角に執着し、三角も危なっかしい冷川のことが放っておけなくて……みたいなBL風味もあり。原作はアニメイトの子会社・リブレが刊行する月刊誌「MAGAZINE BE×BOY」にて連載されていたヤマシタトモコによる漫画作品。昨年3月に全10巻で完結し、1月には岡田将生と志尊淳の主演で実写映画も公開されました。

 監督・キャラデザは『ニル・アドミラリの天秤』メインアニメーター『継つぐもも』お色気アニメーター*21安田好孝。各話総作監も担当しています。シリーズ構成は『アイドリッシュセブン』シリーズの関根アユミ。アニメーション制作は『つぐもも』『ニル・アドミラリの天秤』『理系が恋に落ちたので証明してみた。』のゼロジー

 割とBL匂わせシーンもあり、序盤はそこまで……という感じだったんですが、主人公の出生の秘密が明かされてから、ラスボスとの戦いに至るまでが思った以上に盛り上がり、期待以上に楽しめました。ラスボス、ダース・ベイダーであり碇ゲンドウなんですよね。クラシックな構図ではあるんですが、予想してなかったし、色んな人と共闘する展開も熱かった。駆け足感もなくアニメでしっかりまとまっていて、思わぬ収穫でした。絶対にオカルト信じないおっさんとか、CV安済知佳のJK呪い屋とか、サブキャラや彼らのエピソードも良かった。ただ、冷川さんのことだけは最後まであまり好きになれず。彼もある種被害者なんですが、どうもところどころのメンヘラムーブがね……。

シキザクラ

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シキザクラ | アニメ動画見放題 | dアニメストア

 関係者のエゴサがエグいアニメ。

 中京テレビの企画「ナゴヤアニメプロジェクト!」発のオリジナルアニメ。東海エリア(愛知、岐阜、三重)を舞台に、スタッフも東海エリア中心、声優も東海エリア出身者を起用するこだわりの強いアニメです。

 原作・アニメーション制作は無印2期以降の『ラブライブ!』シリーズや『PSYCHO-PASS サイコパス』の3DCGを担当し、名古屋にもスタジオを持つサブリメイション。テレビアニメの元請制作は初で、一部話数を除き、基本3DCGで制作されています。サブリメイション代表取締役で、『ガッチャマンクラウズ インサイトCGI監督『魔法使いの嫁CGIディレクターの須貝真也が総監督、『ラブライブ!サンシャイン!!』CGディレクター『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』CGスーパーバイザーの黒崎豪が監督を務めます。シリーズ構成は『スカーレッドライダーゼクス』の永川成基(名古屋出身)、原案デザインは名古屋のデザイン事務所・K&Kデザイン*22所属の井上涼雅、キャラデザは『SKET DANCE』の中武学(名古屋出身)。OP・EDにも共に名古屋出身の亜咲花、May'nを起用する念の入れよう。

 少年少女がパワードスーツ着てオニと戦うっていうのが大筋なんですが、奇を衒わない王道ストーリーがかゆいところに手が届くって感じで、個人的には今期のダークホースでした。というのも、ご当地アニメということで、やたら特産品を押し出してきたり東海出身の有名人出してきたり*23、たまにある2D作画回のギャグのノリがなかなかしんどかったり*24と、かなり癖の強い点が散見されるんですが、だからこそ大筋の王道ストーリーが映えていた、というのもあるかなと思っています。キャラの掘り下げもしっかりしてたし、CGの特性を活かして戦闘もグリグリ動くし、カットもちょいちょい凝ってるとこあったりして良かったですね。

 単話だと8話のメガネ先輩の回がめちゃくちゃ良くて、戦闘シーンの無音演出からの風鈴の音にしびれました。「あなたを守ることは俺の支えだった」っていうメガネパイセンの台詞もマッマの笑顔も、解釈の余地が残される気がしてすごい良い。なかなかこういう話でこういうキャラにこういう台詞言わせられないと思うんですよ。台詞つながりで言えば、10話の紅緒の主人公に対する「なんでそんなに弱いんだ!」っていうのも彼女の気持ちを推し量ることができるめちゃくちゃ良い台詞でした。こういう、キャラや物語に真摯に向き合ってアニメ作ってる感じが本当に良い。最終話のイバラと主人公とのやりとりもすごいグッときたし、何というか、演技経験の浅い声優さんたちだからこその素朴さがプラスに働いていたところも大きかったんじゃないかと思います。

 どうでもいいんですが、次回予告だけ何故かスマホ直録りみたいな音質で、そのことをSNSでつぶやいたら、関係者の方が親切に予告だけバイノーラルで収録されたと教えて下さいました。正直何故次回予告だけバイノーラルで行こう!となった演出意図はさっぱり分からないんですが、まぁそういう空回り感を含めて個人的に感触は悪くなかったな、という感じです。

 あとOP映像がめちゃくちゃかっこいいので見てくれ。サビ前からの盛り上がりと、音ハメの気持ちよさがすごいんですよ。ディレクターは『ガッチャマンクラウズ』とその続編『インサイト』のOPも手がけた吉邉尚希。な、なるほどね~~~~~!

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SHAMAN KING

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SHAMAN KING | アニメ動画見放題 | dアニメストア

 3クール目。原作の人気エピソード「恐山ル・ヴォワール」編を含むクールでした。作中で流れた林原めぐみの歌う挿入歌、もともとは二次創作だったんですね……。このエピソード自体でめちゃくちゃ感動したとかはないんですけど、単純にアンナと葉のなれそめとして面白かったですし、ハオの人物像がますます掴みづらくなってきたな、というのは感じます。その前の花組とのバトルも良かったし、あと葉がサクッとシャーマンファイト降りちゃったのには結構驚きました。残り1クールですが、まだあまり終盤という雰囲気もないですし、どういう結末になるのか気になります。

ジャヒー様はくじけない!

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ジャヒー様はくじけない! | アニメ動画見放題 | dアニメストア

 2クール目。新EDが良かったですね。

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曲も好きだし、すごろくをモチーフにした映像もすごく良い。出目が1しか出せないジャヒー様、でもドゥルジ、店長、魔法少女といった周囲の人々の手助けでゴールまで進み、最後は魔王さまが出目を一つだけ増やす。正直本編より魔王さまが仕事してる感ありますが、作品の内容をよく表したEDだと思います。

 制作的にはほとんどがグロス回でしたが、ひどく作画が乱れることもなかったですし、貴重な2クール日常系を楽しませてもらいました。魔法少女に魔王さまと、1クール目以上にジャヒー様が苦労人してましたね。終盤の謎バトルとかシリアス匂わせとか、嫌いじゃないよ。最終回にわらわらキャラが集合してくる感じもむしろ懐かしかったです。

終末のワルキューレ

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終末のワルキューレ | Netflix (ネットフリックス) 公式サイト

 「月刊コミックゼノン」にて連載中の梅村真也・原作、フクイタクミ・構成、アジチカ・作画による漫画作品が原作。戦乙女のブリュンヒルデが選んだ人類の英雄たちと神々の、人類の滅亡をかけたタイマン13番勝負を描きます。昨年6月にNetflixで配信され、テレビ放送決定と同時に第2期の制作も決定しました(リンク)。

 監督は『プリパラ』シリーズで多くOP・EDのコンテ演出を手がけた大久保政雄、シリーズ構成は『ご注文はうさぎですか?』『魔女の旅々』『回復術士のやり直し』の筆安一幸、キャラデザ・総作監は『スラムダンク』キャラデザ『頭文字D Second Stage』キャラデザ・総作監佐藤正樹。アニメーション制作はゴンゾのデジタル部門を前身に、もともと3DCG制作を得意としていた、『十二大戦』『Re:ステージ! ドリームデイズ♪』(共同)、映画『HELLO WORLD』のグラフィニカ

 12話かけて3試合やるんですけど、アニメだとテンポが悪すぎる。そもそもラグナロクが決定するまでが爆速なのに試合が始まるまでは目一杯引っ張るし、始まったと思ったら周りにやたらギャラリーがいて、バトってる奴の一挙手一投足にいちいちそいつらのリアクション芸見せられるので、まだるっこしくて仕方がない。というか人間側はなんでどいつもこいつも自前の応援団みたいなの引き連れてきてるんだよ。技名を筆書き文字でババーンと出すとか全体的に演出がそこはかとなくダサいし、双方に必ず入る回想も大して面白くないし、現場に実況者がいるのに何故かナレーションまでいるのもよくわからない。どっちかで良いだろ。

 「強者と強者が戦っている」感を出すために頑張って肉付けしてるのは分かるんだけど、全体的にテンポ感が悪すぎて全部「あーはいはい、強い強い」みたいな感じで見てしまう。試合内容も、特にゼウスv.s.アダム戦なんかはどっちがイキリ倒してよりデカい負けフラグ立てるかみたいな勝負に見えてもうギャグなんですよね。最高神のくせしてどんどんムキムキになるしか能がないゼウス、面白すぎる。ポセイドンv.s.佐々木小次郎戦で、ポセイドンの強いぞエピソードのために「幻の13人目のオリンポス十二神」みたいな謎のオリジナル神出してきたのも笑った。知性派と見せかけて急にブチキレ出すワルキューレさんも面白い*25

 アニメーションも止め絵自体は綺麗なんだけど、動きのあるアニメーションとして見応えがあるかというと微妙で、まぁ楽しめたとは言い難いんですが、一周回って面白いというか、このアニメ界の牛歩戦術的手法がどこまでいくのか見てみたい、という気持ちもなくはないのでテレビで続きやるなら一応見るかな……。

白い砂のアクアトープ

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白い砂のアクアトープ | アニメ動画見放題 | dアニメストア

 2クール目。1クール目とはガラッと雰囲気が変わり、アクアリウム・ティンガーラの営業部に配属されたくくるの奮闘を描くのがメインになります。

 良くも悪くも雰囲気アニメで、キャラ目的で見るには十分なんだろうけど、ストーリー的にはあまり満足いく出来とは言い難かった。そもそもくくるたちがおじいのコネで就職成功してるあたりからしてなんだかなぁ、って感じなんですが、そこに待ち受けているのがプランクトン」呼びの副館長ってのも……。この人、多分一番シナリオの割り食ってて、具体的な有能描写されないのにパワハラキャラ*26ばかりが前面に出てくるわ、過去も割と雑に明かされるわで一周回って可哀想でした。キャラの扱いの雑さは随所に散見されて、主に邪魔になると親父が倒れてフェードアウトさせられた櫂くんとか、院卒しかキャラがなかった(そしてその割にインパクトの強かった)院卒とか、飯食いに行く店にいる店員さんでしかなかったうどんちゃんとか、最後までキャラ紹介ページに載らなかった海やんとかですかね。かと思ったら、イライラしてるお姉さんが実はシングルマザーでした!みたいなよくわからん掘り下げもあったりして、何がしたいのかよくわからなかった。

 こういうサブキャラの扱いの適当さから、「とりあえずくくると風花がイチャイチャしてるとこ見せときゃ良いんでしょ?」みたいな制作側の意図が透けて見える気がしたのも、あまり印象が良くありませんでした。2クール目の風花の万能スパダリ感もすごかったし。当然のように島までくくる追っかけてきて気づいたら隣にいるの、普通に考えたらホラーでしょ。

 あと水族館が舞台の割に、その要素が後景化してて、あまり本筋に関わってこないんですよね。ウミガメの産卵シーンとか、水に飛び込めないペンギンとか、沖合をうろつくイルカとか、それっぽい要素はいろいろあったし、終盤取って付けたような風花の留学エピソードとかもあったんですけど、あくまで「それっぽい」だけで、いまいち「生き物としっかり向き合っていた」という印象が薄く、くくるの仕事のポカとか、人間関係とかに話が終始していたように思います。それはそれで別に構わないんですが、前述のようにキャラの掘り下げもおざなりとなると、ちょっとそれはどうなん?という気もしてくる。あと一番ビビったのはキジムナーっすね。まさかマジで単なるアイコンとは思わなんだ。出す意味全くなかったでしょ、あいつ。

 ここらへん、監督のインタビューからもそういう姿勢が見えたり見えなかったりするように思ってます。

――ということは、1クール目の「がまがま水族館」で“見えた”ことなどは、そういうところから生まれたのですか?

 

篠原 そこまで意識したわけではないですけど、水族館の効用をそのまま描写しても面白くならないので、現実を拡張しファンタジーをからめて見せていく手法を取りました。

 

――そのほか、実はこんな設定があったとかアイデア元ネタなど、今だから言えることはありますか?

 

篠原 裏設定だと、おじいの生い立ちやウミやんの子供のこととかは考えてました。あと館長やマリナが日系二世三世だったりとか。うどんちゃんのお父さんの消息も気になります。最終回で櫂の恋を少しだけ報われるようにしようかと思っていたら製作委員会の方々に全力で止められたとか、本筋に関係のないことはたくさんありますね。

副館長(諏訪哲司)は敏腕で、くくるの仕事を裏でフォローしてる設定をあれこれ作っていましたが、結局全然見せませんでした。

出典:https://akiba-souken.com/article/54361/

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 結局のところ、水族館で働いてるだけじゃアニメにならないために、青春アニメに舵を切ったその力量不足がそのまま作品にも反映されたのではないか、と思ってしまいました。とはいえ、全くもって退屈というわけではないですし、キャラそれぞれには見所もありました。ツッコミどころも許容したうえでさらっと見るのが吉かな、という感じです。

 

進化の実~知らないうちに勝ち組人生~

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 ほぼ見せる気のない誠一の今日のステータスコーナー、いる? 

 「小説家になろう」発の美紅によるモンスター文庫ライトノベルが原作。ちなみにモンスター文庫作品のアニメ化は『魔王様、リトライ!』に続く2作目になります。デブ&ブサイクの主人公が学校ごと異世界に転生、空腹の果てに食べた「進化の実」でステータスが上がるばかりかスリムなイケメンに。が、目の前に突然屈強なゴリラが現れて……みたいなお話。

 監督は『エレメントハンター』の奥村よしあき、シリーズ構成は『けだまのゴンじろー』の市川十億衛門*27、キャラデザはググっても何も引っかからないので変名くさい荏田みなみ。アニメーション制作はグロス請けでしばしば名前を見かけるHOTLINE。元請制作は5分アニメ『スパロウズホテル』以来で8年ぶり。

 振り切ったC級アニメ。話も作画も三流ですが、そのことを自覚した上で、逆手に取った楽しみ方を提示してくるアニメでした。主人公がモテまくってチート能力で活躍しまくる、というよくネタにされるようななろう小説の典型、と見せかけてその1000倍くらい頭のおかしい展開が毎話毎話襲ってきます。序盤は普通にしんどかったんですが、CVが作者のチンピラみたいなモブが「ウホッ!」って言い始めたり、主人公がリンカーンを召喚したり、だんだんツッコミどころだらけの狂気が解放されていき、今期アニメの中でも異様な存在感を放っていました。てか原作者のキャラ、モブのくせに準レギュラーくらい出てくるし、プロ声優の中に混じっても違和感ないくらい演技上手いし、こんな話書いてるくせに異様に落ち着いたTwitterの運用っぷりが逆に怖いし、何者なんだよ……。

 ただ、素面かつコメントなしで一人で見るのがキツいのは間違いないです。真面目に苦言を呈しておくとすれば、プロモーション的には「ゴリラがヒロイン」ということを推していたにも関わらず、全体を通してみればゴリラ要素は序盤だけですし、もう少しゴリラであることを活かした描写が欲しかった気がします*28。というか、どのキャラも主人公のハーレム入りしてからは影が薄くて、マジで主人公に都合の良い女にしかなっていなかったのが残念でした。ストーリーの方は、まぁ、うーん、何を言ってもしょうがないって感じです。間違いなく2021年における究極のトンチキアニメだったと思います。

真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました

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 「小説家になろう」発のざっぽんによる角川スニーカー文庫ライトノベルが原作。生まれつき備わった「加護」が大きな意味を持つファンタジー世界を舞台に、勇者パーティーを追い出された主人公が、辺境の街で旅の途中出会ったヒロインとともに、薬屋を開いてスローライフを送るお話……ってほぼタイトルで説明終わっとるやないか。

 監督は『うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVEレボリューションズ*29ダメプリ ANIME CARAVAN』『キングスレイド 意志を継ぐものたち』の星野真、シリーズ構成は『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』『キングスレイド』の清水恵、キャラデザは『ダメプリ』の渡辺るりこ。サブキャラデザ・総作監大川美穂子松本淑恵水谷麻美子のうち、大川と水谷は『ダメプリ』で各話作監を務めています。アニメーション制作はのウルフズベイン(『ピーター・グリルと賢者の時間』)×スタジオフラッド(『ダメプリ』)。ともに元請制作は2作目です。
 健闘していた方ではないかと思います。一応原作履修済みなのですが、話の区切りまで駆け足でもやってくれたのと、リットがめちゃんこ可愛かったので十分満足です。加護まわりの世界観をしっかり描けていたと思いますし、コロコロ表情の変わるリットや思った以上に大空直美の演技がハマっていたルーティ、心の声が楽しいティセに丸っこいデザインの可愛いうげうげさんなど、アニメで見られて良かったところがありました。一方で、シリアスパートはめちゃくちゃ駆け足で、原作読んでる僕が何やってんのかよくわかんなかったので、アニメ勢はホントに何が何だかよくわかんなかったんじゃないでしょうか。画面的にも終盤の戦闘シーンは大分しんどそうで、かと思ったらルーティのとこだけ頑張ってましたね。あとやっぱり駆け足とは言っても全体的にずっと戦ってばかりでスローライフ感があったかと言われると微妙ですよね。まぁそこも含めて本作なのでしゃあないと言えばしゃあないんですが。

SCARLET NEXUS

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 2クール目。もっと楽しむことが出来たんじゃないかという後悔が大きい。多分2クール目の時点でシナリオを普通に楽しむには遅すぎて、たまにあるシュールな画面を楽しむ異常アニメーションとしてしか受容できなかったことに忸怩たる思いがあります。いや、でもホントに笑っちゃうようなシーンが多かったのも事実で、1クール目の未来ユイト「俺を殺してくれ!」インパクトもさることながら、2クール目も画面分割ループするカレンとか、無限増殖するカレンとか、絶叫するカレンとか、この戦いが終わったら餃子パーティしようぜみたいな台詞とか、背中にうにょうにょしたミミズみたいなのを生やした主人公たちとか、言葉では説明し尽くせない異常な演出・画面が多く、話がまぁまぁややこしいのもあって、そっちにばっか気を取られてしまいました。

 これからスカネクに触れる人は、普通にゲームだけ手を出せば良い気がします。アニメもたまに「あっ、ここゲームだとこういう操作するイベントなんだろうな」みたいなのがすごい伝わってくるシーンとかあったし、ちゃんと追ってれば話も面白かったんだろうなっていう感触はあったので……。話の落としどころとしては、そういうところに持っていくんだ、みたいな意外性もあったので、なおさらちゃんと楽しめなかったのが悔やまれますね。いや、正直アニメの演出側にも大いに問題があったとは思うんですが……。

世界最高の暗殺者、異世界貴族に転生する

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 「小説家になろう」発の月夜涙による角川スニーカー文庫ライトノベルが原作。作者にとっては、『回復術士のやり直し』に続く2作目のアニメ化となります。監督は『アンジュ・ヴィエルジュ』『つうかあ』『賢者の孫』『魔王学院の不適合者』のシルリンおなじみ田村正文、シリーズ構成は『アンジュ・ヴィエルジュ』『サクラダリセット』『つうかあ』の高山カツヒコ、キャラデザは『ブレイドアンドソウル』『あんさんぶるスターズ!』(共同)の長田絵里。アニメーション制作はSILVER LINK.×studioぱれっとぱれっとは、マッドハウスグロスを主に請けていたフウシオスタジオの事実上の後継会社だそうで、『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』『魔王学院』『のんのんびより のんすとっぷ』など、シルリン作品のグロス請けもしています。総作監吉川佳織ぱれっと所属。

 世界最高の暗殺者だったイケおじが口封じのため暗殺され異世界に転生、暗殺者の貴族の子として生まれ、女神の依頼に従い勇者を殺すために研鑽を積みます。原作者監修のもと、アニオリ多めの構成だったそう(ソース)。1話で前世の暗殺者イケメンおじさんの活躍から転生の経緯が結構しっかり描写されていて、幼年期にも割と尺を使っていた記憶。聞けば原作1巻を1クールかけてやるタイプのアニメだったらしく、本作にはそれが上手くハマっていたかなと思います。中味がイケオジっていうのがしっかりわかっているので、俺TUEEE要素やキザな振る舞いもそれほど違和感がないんですよね。ヒロインたちを利用すること込みで助け出し、ヒロインの方も主人公に都合が良いから助けられたということを理解したうえで主人公を慕っているっていう関係性が良い。全然関係ないんですけど、一人ポジションも見た目も『精霊幻想記』のセリア先生にめっちゃ似てる子がいたのも印象的。画面も安定していたとは思いますが、やっぱり逆再生魔法はダサくてあんまり好きになれませんね……。

 あと子どもルーグくんがパッパに素っ裸に脱がされて、至って真剣に身体チェックされるパートは毎回変な笑いがこみ上げてきた。他の転生者を眺める女神様のギャグパートも嫌いじゃなかったよ。

SELECTION PROJECT

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 ネタバレがあります!未見の方はご注意下さい。

 IDOLY PRIDE 2期

 KADOKAWA動画工房が送るオリジナルアイドルアニメ。オーディションに挑む少女たちに密着するリアリティーショー「SELECTION PROJECT」に参加する、全国各地から集まった9人のアイドルの卵たちが切磋琢磨する姿を描きます。

 監督は『私に天使が舞い降りた!』『恋する小惑星』の平牧大輔、シリーズ構成は『曇天に笑う』『ラクエンロジック』の高橋悠也、キャラデザは『彼女、お借りします』の平山寛菜総作監は『恋アス』にも総作監として参加した杉田まるみ松浦麻衣です。

 色んな点で被り事故*30を起こしている『IDOLY PRIDE』とは、プロジェクト始動時期まで1ヶ月違い*31という近さで、もうコラボしちまえよといった感じ。ただ、今のところこっちはゲーム化の予定はなさそう。

 アイプラとのあれこれを置いておくとしても、フィクションにおけるリアリティーショーのリアリティのラインをどこに定めるか、という点で苦戦していた気がします。互いに競い合うという関係上、序盤が割とギスギスしがちだったのもちょっとしんどかったし、全編通して運営何考えてんの?みたいな展開が多く、やりたいシナリオのためにリアリティーショーという設定が置いてけぼりにされていたような気がします。中盤のセレプロ(作中作)の枠を飛び出して自分たちの力でもう一度頑張ろう!みたいな展開はかなり好みだったんですが、そこからなあなあで出戻ったのがあまり納得いってなくて*32、やたら差し挟まれるアイドルの家族の描写と絡めて、セレプロ(作中作)=家族のメタファーみたいな説も見かけたんですが、いまいちしっくりこない。また終盤のライブに間に合うか間に合わないかみたいなところに特に顕著ですが、感動的なシーンを演出しようとすればするほど、「大人が大勢で作ってる番組でそれはなくない?」とか「作中世界の視聴者はこれを受け入れられるのか?」みたいなノイズが強くなってしまって物語に入り込めなかったです。今にして思えば序盤で身を引いた大西沙織キャラとかも何しに出てきたのかよくわからんし、マジでリアリティーショー要素がずっと足を引っ張っていた気が……。

 ただ絵はずっと綺麗でした。ライブもCGと2D作画を使い分けてて、特に後者はめちゃくちゃ力入ってましたね。

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 特にこれとか、普段と髪型も衣装も変えてこんだけ踊らせてて、素直にすげぇとなりました。

 キャラも悪くはなかったし、シナリオが惜しいなぁというアニメでした。

 

先輩がうざい後輩の話

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 うざい先輩どこ……ここ?

 作者・しろまんたのTwitterやpixivにて連載されている漫画が原作。一迅社より書籍化され、そのWebコミック配信サイト「comic POOL」でも連載中。監督は『イエスタデイをうたって』副監督で、rato名義でイラストレーターとしても活動している伊藤良太。シリーズ構成は『Yes!プリキュア5』などプリキュアシリーズで多くシリーズ構成を担当した『いつだって僕らの恋は10センチだった。』『抱かれたい男1位に脅されています。』『アイ★チュウ』の成田良美。キャラデザは『アルスラーン戦記』『キリングバイツ』キャラデザ協力(共同)の阿部慈光総作監には『ラブライブ!』キャラデザの室田雄平、『アサシンズプライド』キャラデザの吉川真帆、『私に天使が舞い降りた!』キャラデザの中川洋未、『わたてん』『イエスタデイ』各話作監武藤幹が名を連ねます。

 会社のPR動画風OPのコンテ・演出は『NEW GAME!』副監督『エロマンガ先生』監督の竹下良平*33社畜必聴の現代の労働讃歌です。

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 基本的には「こういうのでいいんだよ」を地で行く作品なんですが、社会人にもなって中学生のガキみたいな恋愛してるのには結構もにょります。社会人という設定が話に活かされてる感じが全然しないんですよね。全部中学生のラブコメに還元できてしまいそうな雰囲気がある。特に桜井・風間ペアはその感が強くて、弟をダシに男を家に呼ぼうとする桜井にはさすがに呆れてしまった。いい歳してそんなこすっからい策を弄するんじゃないよ……。あと、ヒロインが一人になったところにモブが絡んできて男が助けに入る、みたいな展開をうんざりするくらい繰り返されたのも辟易。ここらへんの安易な展開の手つきがいかにもTwitter漫画っぽくて、正直あまり好きではないです。先輩はデカくて強くてがさつで男らしくって、後輩は小柄、みたいなゴリゴリのテンプレ的なキャラ造形にもやや疑問を覚えるし、桜井に絡む同僚の言動の描き方にもなんだか不安を感じます。前時代的な価値観と、働きやすそうな会社の雰囲気とが作中に同居してるのが歪に見えるんですよね。

 なんか文句ばっかですが、色んなペアの絡みを見られるのは楽しいし、画面も高いレベルで安定していて、手軽なラブコメ成分を摂取したいのであればそれなりに適した作品だったとは思います。あとは月城モナの出番をもっと増やせ

大正オトメ御伽話

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大正オトメ御伽話 | アニメ動画見放題 | dアニメストア

 「ジャンプスクエア」にて連載されていた桐丘さなによる漫画『大正処女御伽話(タイシャウヲトメー)』が原作。続編『昭和オトメ御伽話』も漫画アプリ「少年ジャンプ+」にて2020年5月まで連載されていました。現在もジャンプラにてスピンオフ『大正処女御伽話-厭世家ノ食卓-(ペシミストのしょくたく)』が連載中です。

 金持ちの家に生まれたが事故に遭い、右手の自由を失った志磨珠彦のもとに、彼を田舎に厄介払いした父があてがった少女・夕月がやってきます。最初は鬱陶しがっていた珠彦だが、彼女の優しさにふれ、次第に心を開いてき……みたいなお話。

 監督は『カミワザ・ワンダ』助監督『ベイブレードバースト 超ゼツ*34以降のベイバトル演出の羽鳥潤、シリーズ構成は『うちのウッチョパス』『GO!GO!ムッシーヒーロー!!』の福田裕子、キャラデザは『カミワザ・ワンダ』キャラデザ『妖怪アパートの幽雅な日常』各話総作監渡辺まゆみ。アニメーション制作は前クールにベガエンタテイメントと共同で『出会って5秒でバトル』を元請制作したSynergySP。テレビアニメの単独元請制作は7年ぶり。

 ヒロインがやってきていきなり主人公に惚れてるのが納得いかなくて、そこがずっと引っかかっていた状態で見ていたんですが、一応最終話で惚れるまでの経緯っぽいのも明かされたので、そこは良かったです。展開的には落として上げるっていうパターンが多くって、最初は嫌な奴なんだけど、ちゃんと向き合うと良い奴、みたいな優しい世界だった。大正時代特有のあのエピソードのおかげで物語にも緩急があって、しっかりした作りにはなっていたと思うんですが、キャラ的にもエピソード的にもあんまり刺さるところがなかったんですよね。なんでだろう……。でもやっぱりヒロイン視点はもうちょっと早めに欲しかった気はしますね。ウジウジ男のもとにある日突然無条件全肯定女が現れたら、嬉しいというより不気味ってのが先に立ってしまうと思うので……。

takt op.Destiny

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takt op.Destiny | アニメ動画見放題 | dアニメストア

 「タクトオーパス ディスティニー」と読みます。DeNAバンダイナムコアーツが送るメディミックス企画『takt op.』のアニメで、アプリゲーム『takt op. 運命は真紅き旋律の街を』もリリース予定*35。ちなみにタイトルのop.(オーパス)とは、楽曲の作品番号のこと。

 音楽に惹かれて集まる異形の怪物・D2により人類は蹂躙され、音楽が禁忌とされる時代。D2に抗う力を宿した少女・ムジカートと、彼女たちを指揮するコンダクターによる戦いを描きます。

 原作にはDeNAとともにゲーム『サクラ大戦』シリーズの広井王子がクレジットされています。監督は『魔法少女リリカルなのはViVid』『GRANBLUE FANTASY The Animation』の伊藤祐毅、シリーズ構成は『GRANBLUE FANTASY The Animation Season 2』『THE GOD OF HIGH SCHOOL ゴッド・オブ・ハイスクール』『恋とプロデューサー〜EVOL×LOVE〜』の𠮷村清子。キャラ原案はイラストレーターのLAM、キャラデザは『若おかみは小学生!』『Sonny Boy』各話作監長澤礼子。D2デザインは、マッドハウスグロス請けを担当した『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました』6話の作監を務めた原科大樹。アニメーション制作はMAPPA(『賭ケグルイ』『ゾンビランドサガ』『呪術廻戦』)×マッドハウス(『若おかみ』『Sonny Boy』『吸血鬼すぐ死ぬ』)。戦闘多めの話数をマッドハウス、そうでもない話数をMAPPAがそれぞれ半分ずつ制作しており、それぞれ各話総作監を長澤と、『将国のアルタイル』『バック・アロウ』キャラデザの菅野利之が務めています。他にもプロデューサーインタビューを読むと、シナリオはアニメ先行だとか、演奏シーンがどうだとか、色々面白いので興味のある方はご一読をオススメします。

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 また、公式サイトには本編を補足する「takt op.Intermezzo」なる読み物があり、特に最終話のラストなどは読んでいた方が作品理解が深まると思います。

 全然悪くはないんですが、もっと面白くなれたんじゃないかなぁみたいな気がしますね。や、個人的にはキャラデザがすごい好みだったのもあって、それなりに満足してるんですが、もっと伸びしろがあったと思っています。戦闘シーンもめちゃくちゃ動いてて見応えがあったし、回数としては少なかったものの、要所要所で挟まれる演奏シーンも悪くなかった。画面的には非常に満足のいく作品でした。ストーリーも、1話でコゼットが運命となって、主人公やお姉さんが運命を受け入れられるようになるまでの過程がじっくりと描かれていて、それが8話のED映像に反映されたのにはぐっときました。ただ、本筋の敵と戦うくだりはやや微妙で、首席指揮官さんは敵として小物過ぎるし、ラスボスは回想があっさりめで何故あんなことしたのかという動機の部分にあんまり共感できなかった。あと音楽を題材としていて、確かに主人公が指揮者である父親と向き合い、自分の曲を作り上げようとしていくという筋立ての中に音楽という要素がしっかり織り込まれているのはいいんだけど、結局戦闘は肉弾戦だし、「運命」とか「ワルキューレ」とか名付けてるくらいなら、戦闘にももう一声音楽っぽい要素が欲しかった気がします。現状男は戦闘時棒振り回してるだけに見えてしまうので……。

 総じて作品の空気感はとても好みでしたし、コゼットと運命を演じ分ける若山詩音の演技や、主人公とコゼットやレニーとタイタンをはじめとする様々なムジカートとコンダクターとの絆の描写も良かった。一方で、どこか少し物足りないところがあったのも確かな作品でした。

月とライカと吸血姫

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 「吸血姫」と書いて「ノスフェラトゥ」と読みます。牧野圭祐によるガガガ文庫ライトノベルが原作。もともとテレビドラマの脚本家として活躍していた原作者自身がシリーズ構成を務めます。監督は『フォトカノ』『Cutie Honey Universe』の横山彰利、キャラデザは『ファンタジスタドール』『モンスター娘のお医者さん』の加藤裕美。作品を彩る音楽は、ゲーム『クロノ・トリガー』やアニメ『イナズマイレブン』の光田康典が手がけます。アニメーション制作は『ぼくたちは勉強ができない』(共同)『モンスター娘のお医者さん』のアルボアニメーション。全体的に主張の強い劇伴はゲーム『クロノ・トリガー』の音楽を担当したことで知られる光田康典

 冷戦期における米ソの宇宙開発競争をモチーフに、迫害を受ける吸血種族の少女と、とある事情で宇宙飛行士候補生から補欠にまわされた主人公が二人三脚で宇宙を目指します。原作既読で臨みましたが、結構アニメとの解釈違いがあって、とはいえ、アニメ自体は本作の魅力を十分引き出せていたと思いますし、初見勢の反応も悪くなかったみたいなので、満足すべきところだと思います。個人的には本作に爽やかなイメージを抱いていたこともあって、主演が林原めぐみとかOPがALI PROJECTとか、そういうやや重ための雰囲気があんまりしっくりこなかったです。演出もちょいちょいシュールで、食事シーンが妙に官能的だったり、吸血シーンで宇宙までトんでいったり、イリナが振り切ったギャグ顔になったりと、一歩間違えばトンチキみたいな道を進んでいた印象があります。ただ、原作者が構成に入っていることもあって、ストーリーのしっかり描いて欲しいところはきっちり抑えてくれていて、レモネードのくだりとか、料理の暗号を使ったイリナとレフのやりとりとかアニメで見れて良かったですね。中でも最終話の演説シーンは特に良かった。レフ役の内山昂輝が演じてるっぽいモブが、レフに野次を飛ばすシーンが示唆的で印象的でした。最終話でチラッと続きで登場するキャラも顔見せしてたし、是非続きもアニメで見たいですね。

ディープインサニティ ザ・ロストチャイルド

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 スクウェア・エニックスが展開するメディアミックス企画『Deep Insanity』の一環であるアニメ。割と表記揺れが激しくて、カタカナ表記のとこもあれば『Deep Insanity THE LOST CHILD』のアルファベット表記のこともあります。漫画『魔法少女特殊戦あすか』原作の深見真、『がっこうぐらし!』原作の海法紀光、そしてコミカライズ『NIRVANA』の作画を担当する塩野干支郎次の3人が世界観原案としてクレジットされています。『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』『ナカノヒトゲノム【実況中】』『キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦』などシルリン作品でおなじみの大沼心が監督を務め、シリーズ構成はこの3作で監督と組んだ下山健人。キャラデザ・総作監は『CHAOS;CHILD』『サークレット・プリンセス』『魔王学院の不適合者』の山吉一幸。アニメーション制作はSILVER LINK.。コミカライズの他に、アプリゲーム『ASYLUM』も配信中。

 アニメは漫画とゲームの中間の時系列に位置し、突然昏睡状態に陥ってしまう原因不明の病「ランドルフ症候群」の発生とともに発見された南極地下の巨大空間「アサイラム」の謎に挑む主人公たちが描かれます。

 もしかすると今期一影が薄かったアニメ。エンジンがかかるのが遅すぎましたね。さすおに並みの無能サブタイ(take 01、take 02、……)が伏線っぽかったのが二重の意味で驚きでした。シンプルにびっくりと「それ、伏線のつもりだったの?」っていう……。上記の世界観は本作の物語の大筋にはほとんど絡んでこなくて、キャラの当番回やった後は女の子を暗殺するかしないかみたいな話が始まります。そもそも1話からして魅力に乏しく、そこから特に際立った見所のない当番回が続くので、ここまでで大分視聴者が淘汰されてそうです。ただ隊長の秘密が明かされて、ラスト3話くらいになってくるとさすがにちょっとずつ面白くなってきて、最終話は一応キャラの掘り下げが活きた連携とかもあって、それなりに楽しめました。最後まで見るとEDの歌詞が染みる仕様なのも結構好きだよ。全体的にもうちょっと見せ方何とかならんかったんか、みたいな気持ちが強いですね。まぁアニメは世界観を構成する一部に過ぎないからそこまで力入れてなかった感じなのか? ラストで『ASYLUM』のタイトルロゴ出てきたし……*36。あとどうでも良いですけど、創作物に出てくるオネエキャラ(本作で言う副隊長)ってほぼ例外なく有能ですよね。無能な奴見たことない。なんで?

 OP、曲は今期トップクラスに好きでした。巷でよく見る「フラッシュの点滅にご注意下さい」とは比べものにならないレベルの音ハメチカチカ映像も印象的でしたが、逆に見にくくなっててう~ん、と思ってたら11話でチカチカなくなってましたね。もしかして演出……? マーベルよろしく前回の映像が爆速で流れていくラストも嫌いじゃない。

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でーじミーツガール

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 実家のホテルで働く沖縄の女子高生のもとに、「すずきいちろう」と名乗る男が現れる。彼が来てから、部屋を魚が泳いだり、バカでかいガジュマルが生えてきたりと不思議な現象が起こるようになって……。1分半のショートアニメ。

 キャラ原案・シリーズ構成はイラストレーターの丸紅茜。監督・キャラデザは『雲のむこう、約束の場所』『アルスラーン戦記』(共同)キャラデザの田澤潮。アニメーション制作は今期『ビルディバイド -#000000-』と掛け持ちのライデンフィルム

 ショートアニメでここまでしっかり世界観とストーリーを組み上げられるのはすごいと思います。ショートアニメの利点を上手く使っていて、現実世界とファンタジー世界を混ぜ合わせるのとか、この短さだからこそ受容できていると思うし、同時代的なコ〇ナ禍を物語に落とし込んでいるのも、制作期間が短くてすむショートアニメだからこそできる芸当ですよね。安野希世乃の沖縄弁も癒やしだった。

テスラノート

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 原作を西田征史と久保忠佳、作画を三宮宏太が担当する、「週刊少年マガジン」から漫画アプリ「マガジンポケット」に移籍して連載中の漫画作品が原作。原作の西田征史は『TIGER & BUNNY』シリーズ構成としておなじみ。前クールでは水球を題材とする『RE-MAIN』の総監督を務めました。今作でも自らシリーズ構成を務めます。監督は『ヒャッコ』『ぬらりひょんの孫 〜千年魔京〜』『テラフォーマーズ リベンジ』の福田道生、キャラ原案はイラストレーターのPOKImari。漫画原作で作画担当者ではない人が新たにキャラ原案が起用されるの、珍しい気がするんですが、どうなんでしょう。

 で、この原作者の久保忠佳って人とアニメーション制作のギャンビットって会社が謎で、検索すると「ギャンビット」という名前のキャスティング会社と、既に故人であるという久保忠佳がその社長だったという噂が見つかるんですが、真偽は不明。この会社のホームページには本作のことは何にも載っけてないし、両社が同じ会社かどうかも不明。ちなみに制作協力としてクレジットされている3社のうち、studio bokanタイプゼロってところは公式サイトを見る限り『モンスターストライク』のアニメとかに参加してたみたい。残るライズモアってとこはこれだけでググると北海道の運送会社がヒットするんだけど、本作に関わってるのは多分こっち社名と名乗っているグループ名が違うらしい。勘弁してくれ。ちなみにフォロー0、フォロワー0、ツイート0のTwitterアカウントも発見した。やる気ある……? 制作陣に謎の多い3DCGアニメひとつ思い起こされる作品がありますね……。

 キャラの動きに恐らくそのままモーションキャプチャーの動きを持ってきているせいで、どうもアニメで見るにはチグハグな動きがチラホラ。突然差し挟まれる2D作画は某作品のリスペクトの感がある。最終回では「空が綺麗だな~」ってカットが多かったし、「オナカスイタ(小さな家)」とか「存在意義の社交的な集い(レゾンデートルのパーティー)」*37とか、散りばめられるギャグも全体的に滑り倒していて、かなり厳しいアニメなんですが、最後まで付き合った身としては、どこか憎めないアニメだったなとも思います。ストーリーも序盤は退屈だったんですが、主人公の親が云々みたいな話から、原作を追い越して裏切り者が云々みたいな話にかけてはそれなりに面白かったこともあって、だんだん本作のノリを楽しめるように慣らされていった結果ですかね。声優陣が豪華だったのも印象的で、古谷徹まで出てきた時にはひっくり返ってしまった。

闘神機ジーズフレーム

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 放送1週間前に突然告知された滑り込みアニメ。もともと中国で制作されているアニメで、中国の動画投稿サイトbilibiliの企画のようです。一昨年PVが公開されたようで、中国語版のPVは、昨年3月に投稿されたものをYouTubeで閲覧できます。

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中国でのタイトルは『斗神姬』で、日本と同じペースでbilibiliでも公開されていました。おおまかな内容は同じようですが、声をあてる声優はもちろん、OP・EDや、主人公の名前が『斗神姬』では「李星澜」という中国人名、『ジーズフレーム』では「南宮麗香」という日本人名になっているなど、少しずつ変更があるようです。日本版のスタッフを確認すると、原案・シリーズ構成に『薄桜鬼』『精霊幻想記』監督のヤマサキオサム、メインキャラクター原案にイラストレーターのERIMO*38、アニメーションキャラクターデザインに『新サクラ大戦 the Animation』キャラデザ『ひぐらしのなく頃に業』プロップデザイン(いずれも共同)の福島達也がクレジットされています。アニメーション制作は七霊石(七灵石)ことセブンストーン*39ですが、『斗神姬』ではクレジットされているものの、日本版の『ジーズフレーム』ではOP・EDにもスタジオ名はクレジットされていないようです。公式サイトにも日本人スタッフの名前しか明記されていませんが、実際は監督や各話作監レベルは中国の方ですし、脚本も中国の方と日本人脚本家の連名となっています。

 ロボットのデザインが結構ダイナミックで、有翼の蛇型ロボットや、ケンタウロス型のロボットが宇宙を駆けていく様子はなかなかシュールでした。基本的にはトンチキアニメで、作中の勢いに画面が追いついてなかったり、主人公たちにあんまり緊迫感がなかったり、主人公のロボットにCVがついてたり、話しかけてきた異星人の呼びかけをガン無視したりと、ツッコミどころも多々あるんですが、『宇宙戦艦ヤマト』あたりを意識しているんだろうなぁみたいなのも伝わってはきて、艦長なんかは言動もしっかりしていて良かったですね。最終回の「兵器は動いてない時がもっとも美しい」、普通に名台詞では? 

 最後の最後まで気づかなかったんですけど、DGエネルギーに原子力エネルギーを含む現実のエネルギー問題を仮託させているっぽいあたり、割と考えるところは考えて作られた作品だったんじゃないかとも思います。

180秒で君の耳を幸せにできるか?

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 ASMR*40を題材とするオリジナルショートアニメ。アニメーション制作は乙女ゲームのシナリオなどを手がけるINDIVISIONと『魔王様、リトライ!』のエカチエピルカ。監督は同作で各話演出を手がけた葛西良信、キャラデザ・総作監は『天使の3P!』『レヱル・ロマネスク』『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』の野口孝行。企画・原作は「ASMR音声作品プロジェクト」を名乗るRaRoなるブランド。YouTubeのリンクにゲーム『まいてつ』のアニメ化作品『レヱル・ロマネスク』のリンクがあるとおり*41、これは「RailRomanesque」の略らしく、『まいてつ』のブランド・Loseを持つ株式会社ボーントゥってとこが大元と思われます。シリーズ構成・脚本はシナリオライターの逢縁奇演、キャラ原案はイラストレーターで、Lose作品の原画を手がけるcura。

 何がしたかったのかよくわからないアニメでした。音楽にMVがつくように、ASMRに映像を付けようという発想はわかるのですが、そこで「実際に視聴者が耳かきをされているような映像」を作るのではなく、「女の子がダミーヘッドマイクに向かって話しかけている映像」を作ろうとなるの、なかなか思考に追いつけない感じがします。女子高生が100万はくだらないダミーヘッドマイクを購入しているのはまだいいとしても、何故かダミヘが縁側に放置してあったり*42時代が変わったり*43OLの生活を盗撮角度で眺めたり*44と、シュールだったり意図がよくわからなかったりする回がしばしばありました。もちろんASMR感はしっかりあったんですが、そこにアニメーションがついている意味をいまいち感じなかったというか、キャラもまぁまぁ出てきた割にストーリーはあってないようなもんだし、結局何がしたかったのかよくわかんないまま終わってしました。まぁASMR作品の販促になればいいってことなんでしょうか……。

ビルディバイド -#000000-

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 「-#000000-」の部分は「コードブラック」と読みます。カラーコードの#000000が黒であることに由来すると思われます。放送開始前より分割2クールでの制作が決定しており、来年4月より第2クールが放送予定。アニプレックス初となるトレーディングカードゲーム「ビルディバイド」を題材としており、漫画『賭ケグルイ』原作の河本ほむらと、その実の弟で同作の小説やアナログゲームを手がける武野光が原案を担当します。監督・キャラ原案は『無限の住人-IMMORTAL-』助監督の駒田由貴、シリーズ構成は『ベルゼブブ嬢のお気に召すまま。』『幼なじみが絶対に負けないラブコメ』の冨田頼子、キャラデザは『セキレイ』『幻影ヲ駆ケル太陽』『トリニティセブン』の友岡新平。アニメーション制作は今期『でーじミーツガール』と掛け持ちのライデンフィルム。OPがめちゃくちゃ楽しい。特にサビで頭抱えて悶絶する主人公は必見。ちなみにコンテは『D4DJ First Mix』OPの梅津朋美。あれも楽しいOPだった。

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 思った以上に楽しめました。カードゲームで世界が全部決まるタイプのホビー時空が舞台なんですけど、それはともかく棟梨ひよりちゃんが可愛い。ひよりちゃん目当てで視聴余裕でした。全体的にキャラが良いんですよね。コテコテの中二病キャラの主人公がパン好きで方向音痴とか、お前萌えキャラか?みたいな。とか言ってたら、主人公とその妹の過去が明かされたあたりからストーリーも結構面白くなってきて、最終決戦も、さくらの正体とかは何となく予想はついていたものの結構盛り上がったし、2クール目で主人公交代しそうなのは熱い展開。主人公の過去、10対0で主人公が悪いんですが、ああいうことやらかしてしまう心情は結構理解できてしまうのが何ともって感じですね。肝心のカードゲームの方も、まぁ既存のTCGのツギハギっぽいルールなのでそれなりに何やってるかはわかるし、まぁまぁ楽しめました。販促になっているかは知りませんが……。

 そういえばカード教授とか、アイドルとか、生意気なガキとかのちょい役の皆さんはは2クール目で再登場するんでしょうか。

プラオレ!~PRIDE OF ORANGE~

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 アニメーションブランド・CAAnimationを持つサイバーエージェントグループと、合同会社EXNOAが運営するDMM GAMESが送る、女子アイスホッケーを題材とするメディミックス作品。『〜SMILE PRINCESS〜』のタイトルでソーシャルゲームもリリース予定。原作キャラデザがサイバーエージェント傘下のCraft Eggであるためか、キャラの『バンドリ!』感がすごい。監督の安齋剛文、キャラデザの田中紀衣、アニメーション制作のC2Cは『ひとりぼっちの○○生活』の座組。シリーズ構成・脚本は『はるかなレシーブ』『球詠』『いわかける! - Sport Climbing Girls -』など女子スポーツものの経験豊富な待田堂子。作品の舞台が栃木県ということで、プロクラブのH.C.栃木日光アイスバックスがアイスホッケー設定考証としてクレジットされているほか、栃木県、日光市なども協力に名を連ねています。また、公式サイトには「頑張れ!日本のアイスホッケー」と題して全国のアイスホッケーチームの紹介などがされています。

 アイスホッケーの体験教室に参加した女子中学生たちが、チームに入って試合に取り組む姿が描かれます。1話でビクトリーダンスなるそれなんてウイニングライブ?というライブシーンがあって、この方向性でいくのか……という不安があったのですが、話自体はキャラの成長がしっかり描かれ、最後の試合につながっていくという展開でよくまとまっていたと思います。デカい声出せないゴーリー役の子の回は、水着回でありながらキャラの成長エピソードとしても機能していて、上手い作りだと思いました。くどいくらい「心の絆でパックをつなげ!」というスローガンが連呼されるんですが、その通り、幼馴染であるメンバーに加えて、他チームからやってきた優*45ともしっかり関係性を築いていって、それが勝利につながるというストーリーラインが綺麗でした。主人公の人徳が高くて、全方位フォローしてたのも印象的です。スポーツものとして抑えるべき要素をよく抑えていたんじゃないでしょうか。や、ツッコミどころも多くて、試合に負けたのにビクトリーダンス披露した時はさすがに困惑しましたし、話によってシナリオの表から消えたり現れたりする先輩たちも、さすがにもうちょっと触れてあげても良いのではと思いましたが。

 アイスホッケーの試合描写もすごく良くて、選手同士のぶつかり合いとか、パックの奪い合いなんかは迫力がありました。で、その後繰り出されるライブシーンもめちゃくちゃ良い作画で踊っていて、曲の良さも相まってめっちゃ良いんですけどやっぱりちょっと笑ってしまう。だって優とかライブすごい嫌がってたのに、本番ではソロパート歌ってましたからね……。

 ちなみにOPの歌詞もやたら耳に痛くて笑ってしまう。「昔はよかったなんて 思い出話はもう飽きたよ」「足りないものを数えて 言い訳つくるクセは/体質や習慣になって ヒョウジョウを失くしていく」「ずっと このまま在ると思うな/時間は残酷なもの」。ユルシテ……ユルシテ……って感じ。

プラチナエンド

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 漫画『DEATH NOTE』『バクマン。』で知られる大場つぐみ・原作、小畑健・作画のコンビによる、「ジャンプスクエア」にて連載されていた漫画作品が原作。昨年2月に全14巻で完結済み。連続2クールの放送予定で、1stシリーズディレクターを務める『競女!!!!!!!!』『覆面系ノイズ』監督『ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN』シリーズディレクター髙橋秀弥に代わり、2ndシリーズでは『攻殻機動隊 ARISE』総監督『メイドインアビス』キャラデザの黄瀬和哉がディレクターを担当します。シリーズ構成は『暁のヨナ』『エガオノダイカ』『グレイプニル』の猪爪慎一、キャラデザは『ノーゲーム・ノーライフ』の大舘康二総作監は大舘に加えて『アクダマドライブ』キャラデザのCindy H. Yamauchi、『覆面系ノイズ総作監(共同)の重本和花子。アニメーション制作はIGポート傘下で、『ネト充のススメ』『MARS RED』『ドラゴン、家を買う。』のシグナル・エムディ

 登場人物もシナリオもいたってシリアスなのになんか笑ってしまうんですよね。1話の電源ポチーで大爆発する主人公の家族の車とか。主人公の「人を殺してはいけない」というこだわりも、心情は理解はできるんですが、結局その役割を別の人に押しつけてしまっているように見えてしまったり、あと単純にずっとウジウジしてるのが見ててストレスだったりってのもあります。『DEATH NOTE』と差別化しようという試みなのはわかるんですけど、結構思い悩むシーンが多かったのに対して「そうならそうでしゃんとせい!」みたいな気持ちになってしまった。他にもヒロイン含め全体的にいまいちキャラに魅力が感じられなかったのも厳しかった。あと中盤まではテンポも良かったけど、メトロポリマンとの直接対決が始まってからはめちゃくちゃ展開引っ張ってて「はよ終われ」みたいな気持ちになってしまいましたね。だって5、6話くらい使うんだもん……。テンポが悪すぎて盛り上がるシーンが盛り上がりきらなかった気がします。ただ、主人公の天使・ナッセは小倉唯のキャピキャピしてるけど人の心なさそうな演技がハマってて良かったです。2nd Seasonはテンポが改善されることに期待して視聴したいと思います。

ブルーピリオド

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ブルーピリオド | Netflix

 「月刊アフタヌーン」にて連載中の山口つばさによる漫画作品が原作。『かみちゅ!』『マギ』や映画『宇宙ショーへようこそ』監督の舛成孝二が総監督、『遊☆戯☆王VRAINS』14話より監督を前任者から引き継いだ浅野勝也が監督、『のんのんびより』『ガールズ&パンツァー』『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の吉田玲子がシリーズ構成、『サクラダリセット』『食戟のソーマ』『推しが武道館いってくれたら死ぬ』(共同)の下谷智之がキャラデザ・総作監。アニメーション制作は『アルテ』『トニカクカワイイ』のSeven Arcs。

 受験アニメってだけで個人的にはしんどい。あのピリピリ感を思い起こさせてくれるってのは、作品に力がある証拠かもしれませんが……。語弊を恐れずに言えば、主人公が強すぎてキモいんですよね。挫折や失敗も全て次の成功への糧となる前提になっていて、他のキャラから色んなノウハウを取り込みながらゴリゴリ成長していく姿が自分には不気味に見えました。だってコイツ、1話は美大受験とか全然考えてなかったんだぜ? 基本話の作りが、課題の発見→周囲のキャラから解決のヒントを得る→課題解決!のワンパターンしかなくて、なおかつ周囲のキャラは割と普通にがっつり挫折したりするんで、余計主人公の異様な強さが際立つんですよね。多分作者側もそれは織り込み済みで、だからこその龍二からのああいう指摘もあったんだろうとは思うんですが、それでも最後まであんまり好きになれなかったですね……。絵を通して自己の解像度を上げていく話自体は悪くなかったんですが、主人公に関するあれこれが引っかかって、なかなかのめり込みづらかったです。

 画面的にも、十分見られるレベルではあったんですが、「絵」が題材の作品としてはちょっと苦しい場面も散見されて、そこもちょっと苦戦してたかなと思います。

マブラヴ オルタネイティヴ

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マブラヴ オルタネイティヴ|フジテレビの人気ドラマ・アニメ・TV番組の動画が見放題<FOD>

 株式会社アシッドのアダルトゲームブランド・âge*46より2003年に発売されたゲーム『マブラヴ』……の続編となる、2006年に発売された同名のゲームが原作。第1作はアニメ化されておらず、2作目である本作が今回初めてのアニメ化となります。ただ、『マブラヴ』シリーズ全体では、スピンオフのゲームである『トータル・イクリプス*47と、ライトノベルの『シュヴァルツェスマーケン』がアニメ化を果たしています。

 原作にシリーズのプロデューサーである吉宗鋼紀とともにクレジットされているaNCHORは、エイベックス・ピクチャーズ傘下でâge作品のライセンス管理を行っている会社だそう。アニメーション制作はそのエイベックスと、『SSSS.GRIDMAN』などで3DCGを担当したグラフィニカが設立した(ソース)アニメ企画会社・FLAGSHIP LINEがトップにクレジットされ、ゆめ太カンパニーグラフィニカの共同制作という形になっています。ちなみにこれは『Re:ステージ! ドリームデイズ♪』のコンビ。監督は『音楽少女』『異常生物見聞録』の西本由紀夫、シリーズ構成は『GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』『ハイスコアガール』『新サクラ大戦 the Animation』の浦畑達彦総作監はキャラデザの谷拓也(『ラーメン大好き小泉さん』『OneRoom セカンドシーズン』)とサブキャラデザのつなきあき(『超訳百人一首 うた恋い。』『狐狸之声』)。アニメーションメカディレクターは『トータル・イクリプス』アニメーションメカニックデザイン(共同)や『シュヴァルツェスマーケン』戦術機演出としてシリーズに参加した大河広行。ちなみに今期だと『サクガン』のカイジュウ・メカニックデザインもこの人。

 1話のBETA戦が結構熱くて、人類の絶望感がひしひしと伝わってきたんですが、いざ話が進んでみればやってることはもっぱら内ゲバなので、ちょっと肩すかし感はある。いきなり2作目をアニメ化していることもあり、序盤のストーリーは情報量がすごいうえに爆速で進んでいくので、初見は主人公の情緒についていくだけでも相当しんどい。適宜自分で前作のあらすじ調べて抑えておく必要がありそうです。せっかく何人もいるヒロインは大して掘り下げられないし、中盤からは正直どこの勢力とどこの勢力が何のために戦ってんのかもよくわからんまま見てました。ただ、CGによる戦術機同士の戦闘はすごい。敵味方が入り乱れて白兵戦やってるとこを見てるだけでも自分的には十分楽しめました。や、多分熱いんだろうなっていう演説シーンとかもあったんですけど、背景もよくつかめないまま「ニッポンノホコリガー」みたいな話されても困ってしまうんですよね。全編通してキャラのテンションについていくのが難しかった。

 当然のように尺が収まりきらず、秋から第2期が放送予定であることが明かされましたが(リンク)、2期はもうちょっとストーリー面もしっかり楽しめるよう頑張りたいですね。

 OP、曲としてはめちゃくちゃ好きだし、「一度捨てたもの全て/取り戻すためにここにきた」って歌詞も作品にマッチしててめちゃくちゃ良いんだけど、この声質のメンバーをユニゾンで歌わせるな……!という気持ちになる。

見える子ちゃん

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 パンツ見えない子ちゃん。

 Twitter発の、Web漫画サイト「ComicWalker」にて連載中の泉朝樹による漫画作品が原作。監督は『大家さんは思春期!』『みるタイツ』『異種族レビュアーズ』の小川優樹。ちなみに今期は『月曜日のたわわ2』と掛け持ち。シリーズ構成・脚本は『俺だけは入れる隠しダンジョン』『究極進化したフルダイブRPGが現実よりもクソゲーだったら』『月が導く異世界道中』の猪原健太、キャラデザは『十二大戦』の嘉手苅睦、作中で重要な役割を果たす化け物デザインは『ラブひな』『ハイスクールD×D HERO』『レビュアーズ』キャラデザのうのまこと。アニメーション制作は『女子高生の無駄づかい』『レビュアーズ』『ひぐらしのなく頃に業』のパッショーネ*48

 原作よりもエッチな描写が増えてけしからんみたいな話も見かけましたが、個人的にはそこまで邪魔とは思わなかったですね。なんかエロとホラーは親和性高い気もするし。ホラー要素も怖いというよりは姿形が生理的にキモい幽霊が多いので、ホラー苦手な人にも優しい作りだったんじゃないでしょうか*49。ホラー的には、多分最終話の提供芸が一番びっくりした(ネタバレ部分反転)。話的には、一発ネタで終わらないようひねりの利いたエピソードが多くて*50良かったですね。パッパとかネッコとか、普通にエロとかホラー抜きで話の作り方が上手いし面白いんですよね。善先生という人物像を二転三転させるところとかね。絵も悪くはなかったし、わかりやすいエロネタで引っ張りつつ、内容の方もしっかりしている良いアニメだったんじゃないでしょうか。

 最近は原作の話の進み方が遅くて、アニメのころの短めのエピソードを懐かしく感じたり……。

無職転生異世界行ったら本気だす~(第2クール)

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 2021年冬クールに放送された第1クールに続く第2クール。メインスタッフは変更ありませんが、キャラデザに『ナカノヒトゲノム【実況中】』『うらみちお兄さん』(共同)の髙橋瑞紀が加わっています*51

 画面は言うに及ばず、話も順当に面白くて、逆に語るところがないって感じ。作画的にはどこの話数か忘れたけどパンちぎるカットとか、もちろん21話の超絶戦闘シーンとかが話題になってましたね。エピソード的には、やっぱり16・17話のパウロとの再会と和解が白眉ということになるでしょうか。個人的には、続く18話のロキシーの里帰り回も、短尺ながらお互いを思い合う気持ちがしっかり通じ合った様子がよく描写されていて好きでした。終盤のエリスとのエッチからのお別れも(ネタバレ部分反転)、笑っちゃうんですけど、なるほどなぁっていう納得感もあって、しっかり構成された作品だと思いますね。まぁ下ネタ擦りまくるノリは賛否あるとは思いますが……。

 このクオリティを維持するとなると、ほいほい1年後に続きが見れるとは思いがたい一方で、あんまり先になると話を忘れてしまう気もしていて、難しいですね。いや、当然のように続きがある前提で話してますけど、さすがにありますよね? ね?

MUTEKING THE Dancing HERO

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 1980年に放送されたタツノコプロ制作のヒーローギャグアニメ『とんでも戦士ムテキング』のリブート作品。80年代当時のサンフランシスコをモデルとする街を舞台に、当時流行していたローラースケートを取り入れたヒーロー・ムテキングが悪の宇宙人と戦う、といった内容だったそう。今作では、「お前は敵か? じゃあ踊ろう!」をキャッチコピーに、自由で陽気な海沿いの街、ネオ・サンフランシスコを舞台に、「DJ」を自称する男と出会った主人公・ムテキが、突如出現したモンスターに歌とダンスで立ち向かう姿が描かれます。

 タツノコプロ顧問で、『タイムボカンシリーズ』等で総監督を務めた笹川ひろしがエグゼクティブディレクターを務め、『装甲騎兵ボトムズ』『蒼き流星SPTレイズナー』『太陽の牙ダグラム』の高橋良輔が総監督、『C』『だから僕は、Hができない。』『惡の華』などでCGディレクターを務めた『ガッチャマンクラウズ』助監督(共同)のサトウユーゾーが監督を務め、『デンキ街の本屋さん』『チート薬師のスローライフ異世界に作ろうドラッグストア〜』監督の佐藤まさふみが副監督と作中で重要なダンスシーンの絵コンテ・演出を手がけるバトルダンスディレクターを兼任します。シリーズ構成は放送作家で、『レイトン ミステリー探偵社 カトリーのナゾトキファイル』『妖怪学園Y Nとの遭遇』で脚本を手がけた近藤祐次。アニメ作品でのシリーズ構成担当は初めてみたい。キャラ原案はイラストレーターのUtomaru、メインキャラデザは『ガッチャマンクラウズ』『星合の空』『Vivy -Fluorite Eye’s Song-』の高橋裕一、キャラ設定・総作監は『ASTRO BOY 鉄腕アトム*52キャラデザ・総作監瀬谷新二。アニメーション制作はタツノコプロ(『C』『ガッチャマンクラウズ』『エガオノダイカ』)と手塚プロダクション(『ASTRO BOY 鉄腕アトム』『五等分の花嫁』『安達としまむら』)*53

 どこ向けに作っているのか全然わからなかった。見始めは「最後まで見たら色々つながりそうだな~」みたいに思いながら見てたんですが、結局何がしたいのかよくわからないまま終わってしまいました。主人公のダンスと歌唱が一番の見せ場のはずなんですが、当分バンクの使い回しなんですよね。そこに力入れない意味がわからない。あと一部の楽曲を洗脳ソング扱いする姿勢もちょっと疑問。楽曲もすごいたくさんいろいろ使ってたんですが、割とガンガン消費されていくせいで一部を除いて1曲1曲の印象が薄く、画面も微妙。中盤までは子ども向けとも大人向けともしれない古くさいギャグ多めの単話が続き、終盤になってやっとしっかり敵であるIT企業・オクティンクと戦い始めます。そこで今までの伏線っぽいあれこれを回収して、出てきたキャラをしっかり使い切ったのは良かったと思うのですが、そこに至るまでの過程で見てるこちら側の燃料がもう切れてしまった感があって、いまいちカタルシスを感じられなかった。インタビューとか読むと現代の風刺とかがやりたかったみたいなんですが、あんまり成功してる感じはしなかったです。ノリが独特すぎるのと、序盤に見所があまりにもなかったのがキツかったですかね……。

news.yahoo.co.jp

メガトン級ムサシ

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 『レイトン教授』『イナズマイレブン』『ダンボール戦機』『妖怪ウォッチ』など多くのヒット作を生んだゲーム会社・レベルファイブによる新たなクロスメディアプロジェクト。11月にはPS4・Switch向けにゲームが発売されました。アニメは公式YouTubeにてなんと無期限で無料公開されており、力の入れようがうかがえます。ちょうど1年後の2022年秋に第2期の放送も決定されました(リンク)。

 総監督・企画・原案・シリーズ構成・脚本は上記作品全てで企画・プロデューサーを務めた日野晃博。ちなみにOP・EDも自分で作詞されています。「メガトン……メガトン……」「ッヘーイ!」キャラ原案はゲーム『レイトン』『イナイレ』『妖怪ウォッチ』キャラデザの長野拓造。監督はアニメ『ダンボール戦機』『妖怪ウォッチ』で絵コンテ・演出を手がけ、『映画 妖怪ウォッチ FOREVER FRIENDS』『映画 妖怪学園Y 猫はHEROになれるか』で監督を務めた髙橋滋春、キャラデザはアニメ『イナイレ』キャラデザ・総作監池田裕治。アニメーション制作は、井上たかしがプロデューサーを務める『ダンボール戦機』『妖怪ウォッチ』の OLM TEAM INOUE*54

 キッズ向けと見せかけて、結構生々しいシーンがあったりしてびっくりしました。世界観が結構すごくて、宇宙からの侵略者・ドラクターによって人口の99.9%は失われ、地球の中心には穴がぶち空けられ「ドーナツ地球」などと呼ばれており、そのうえ生き残った人類も混乱を防ぐため記憶操作を受けて地下シェルターで表面上平穏に暮らしているという、マブラヴ オルタ』も真っ青の超ピンチ。よくそんな設定盛り込むな、みたいなのは他にもいろいろあって、記憶操作によって家族を失った人同士をくっつけて家族にしているとか、人間がいじめられるのを防ぐためにわざといじめられっ子っぽいアンドロイドを作って学校に配置するとか、そういう激重設定がポンポン出てくる。の割にノリはコミカルだったりするのでテンションの差で風邪を引いてしまいそうでした。最初はヤンキーっぽい主人公が苦手だったんですが、見た目以上に常識人だし、戦闘センスがすごくて、機転を利かせてピンチを回避しつつ、CGの重量感あるムサシが暴れ回るバトルシーンは毎回楽しかったですね。ロボアニメで戦闘シーンが楽しいっていうのはやっぱり大きいと思います。テーマ的にも異種族間理解というお話にかなりしっかり取り組んでいて、続きも気になります。2期も楽しみな作品です。

やくならマグカップも 二番窯

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 2021年春クールに放送された第1期に続く第2期。監督によれば、分割2クールではなく、「第1期制作の途中で第2期が決定した、まさに『第2シーズン』」だそうですが、第1期「放送」途中ではなく、「制作」途中で第2期が決定しているのですから、第1期放送開始時点で第2期の放送が(恐らく)決定していたわけで、視聴者から見た恰好は分割2クールと何ら変わりないように見えますが、そこんとこどうなんでしょうね。まぁ、放送終了直後に「第2期制作決定!」ってした方が放送前から告知するより盛り上がる、という意図があることは理解しますが……。

 閑話休題。メインスタッフは変更ありませんが、第1期では監督の神谷純が一人で担当していた絵コンテが、監督、演出チーフの前田薫平、設定制作の市村仁弥の3人による「手びねり組」というユニット名義になっています。

 この作品に限って言えば、実写との組み合わせはやっぱり相性良かったんじゃないかと思います。アニメの内容を実写がしっかり受けている構成が、地域振興という目的に合致していると感じられました。キャラの何気ない日常的な仕草もすごく良かったのが印象的です。エピソードとしても、十子先輩や姫乃のキャラの内面を掘り下げる描写がしっかりあって、蛇足感のない2期になっていたと思います。十子と祖父のやりとりも良かったけど、姫乃と母、父との関係性もめちゃくちゃ良かった。あのスペースに何を置くか、みたいな話でああいう発想に飛ぶのもすごいし、父と娘の距離感も良いんですよ。家族、友人、物作りといった様々な要素を丁寧に描いた良い作品でした。

結城友奈は勇者である -大満開の章-

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 ゲーム『真剣で私に恋しなさい!』シナリオや漫画『アカメが斬る!』原作を手がけた、アダルトゲームブランド・みなとそふと所属のシナリオライタータカヒロ企画・原案の「勇者である」シリーズのテレビアニメ第3期。2014年秋クールの第1期「-結城友奈の章-」、17年秋クールの「-鷲尾須美の章-」「-勇者の章-」に続き、今期のサブタイは「-大満開の章-」。嫌な予感しかしない。第2期では総監督だった岸誠二が再び監督になっており、シリーズ構成の上江洲誠、キャラデザ・総作監酒井孝裕、アニメーション制作のStudio五組は変更なし。ただでさえ若干ややこしかった時系列がもっとあっちこっち飛ぶので、いよいよ混乱してきます。その上回想の中で回想が始まったりするのでもう訳が分からないのですが、一応話自体はまとまっているので、あんまり正確な時系列を考えなければ何となく見れるとは思います。

 防人編は勇者の裏には候補からこぼれ落ちた防人というまた別の女の子たちがいて……という話が面白く、また西暦勇者編は一般人と勇者との関係性が描かれたのが面白かったです。のわゆ、何もかもが重くて、ずっと「えぇ……」って言いながら見てました。一方で、終盤のまた友奈たちに戻ってきたパートは2期で既にオチを知っていることもあって「まーたやってるよ」みたいに思ってしまった。本作のあんまり好みじゃないところは、最終的には気合いと根性と勇者パンチで全部解決しちゃうところなんですよね。じゃあ最初からそれやれよ、と思ってしまう。キャラにもっと思い入れがあればまた違った感想になるんでしょうが……。

ルパン三世 PART6

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 言わずと知れたモンキー・パンチによる漫画『ルパン三世』が原作。2015年秋クールの『PART4』、18年春クールの『PART5』に続くテレビアニメシリーズ第6弾。第0話「EPISODE 0 ―時代―」にて長年次元大介役を務めた小林清志が引退。第1話より大塚明夫に交代しました*55。なお、0話のみ『PART4』『PART5』で絵コンテ・演出を担当した富沢信雄、キャラデザを担当した横堀久雄、『PART4』シリーズ構成の高橋悠也がそれぞれ監督、キャラデザ、脚本を担当する特別編成となっています。

 監督は『こどものじかん』『ましろ色シンフォニー』『ロード オブ ヴァーミリオン 紅蓮の王』の菅沼栄治、キャラデザは『アクエリオンEVOL』『ノブナガ・ザ・フール』『実は私は』のほか、2019年に放送された『ルパン三世』のテレビスペシャル『グッバイ・パートナー』『プリズン・オブ・ザ・パスト』でキャラデザを担当した丸藤広貴。シリーズ構成は『福家警部補の挨拶』や『警視庁いきもの係』シリーズなどがテレビドラマ化された推理作家で、映画『名探偵コナン から紅の恋歌』『紺青の拳』の脚本も手がけた大倉崇裕。ちなみに、連続2クールでの放送が予定されており、第2クールでは『ゾンビランドサガ』『体操ザムライ』の村越繁にシリーズ構成が交代するそう。また、大倉が執筆するメインストーリー以外の各話脚本は作家を中心としたゲスト陣が執筆したオムニバス形式となっており、振れ幅がすごい。メンバーは辻真先*56押井守*57芦辺拓*58樋口明雄*59湊かなえ*60。アニメーション制作は、前身となる東京ムービー時代から『ルパン三世』シリーズを制作し続けているトムス・エンタテインメント。『PART4』『PART5』では子会社のテレコム・アニメーションフィルムが制作を請け負っていますが、トムス名義でテレビシリーズを担当するのは初かな。

 実は『カリオストロの城』すら見たことのないバキバキのルパン童貞だったんですが、正直あんまりパッとしないな、という印象。オムニバス回が全体的に癖の強い回が多かったのもあるかもしれない*61し、本筋のホームズの話がオムニバス回によってぶつ切りになっているせいかもしれないし、そもそも僕がルパンに全く愛着がないせいもあるかもしれません。普通に見れはするんですが、謎解きすげぇ!!!って感じでもないし、アクションすげぇ!!!って感じでもないし、どこら辺に重きを置いて見ればいいのかがよく分かりませんでした。まぁ2クールありますし、もう少し楽しみ方を考えていきたいと思います。

ワールドトリガー 3rdシーズン

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 2021年冬クールに放送された2ndシーズンに続く3rdシーズン。主要スタッフは前期から変更なし。

 原作勢的には今期も十分満足のいく出来でした。アニメ勢的には試合のテンポ感とかキャラ覚えてるのかいろいろ不安なところはあるんですが、楽しく見られてるんでしょうかね……? 作画リソースをしっかり考えて画面動かしてるのが印象的でしたね。見せ場となる戦闘シーンはよく動いていたと思います。内容も半分くらい忘れてたんで毎週楽しく見られました。原作ストック溜まるのが何年先かわかりませんが、是非続きもアニメで見たいですね。

 

 というわけで、全45作品、約5万字の感想でした。来期ももしあったら是非よろしくお願いします。

*1:僕の見てるサイトだと配信日も土曜になってて、作品にちなんでるのかなぁと思ったり

*2:OLMはプロデューサーごとにチーム単位で制作を請け負う形を取っており、本作は吉岡大輔プロデューサーのチームが制作を請け負っています

*3:特にすぐ脱ぐディミトリの印象が強い

*4:鬼滅の刃遊郭編の初回1時間スペシャル、これは制作側は悪くない

*5:勝手な印象だけど、制作会社によって絵をとろけさせてでも放送するとこと、がっつり落としてでも一定のクオリティに仕上げようとするとこがある気がしてて、A-1やその流れを汲むCloverWorksなんかは後者の印象が強い。シャフトは落とした上で絵もたまに微妙だったりする(もちろん良い時はすごく良いんだけどね)

*6:ちなみに、本作のエンドカードイラストを担当している細居美恵子は『takt op.Destiny』EDのイラストアニメーションも担当されてます

*7:最終的にビッグサイトが爆弾になって降ってくる

*8:一応株上げエピソードも気持ち程度にあったけど……

*9:少なくとも肝心なところでヘタレないくらいには

*10:2011年の日テレ版、新しい方

*11:去年ガンプラのデザインはやったらしい(リンク)

*12:フルメタル・パニック!』『機動戦士ガンダム00』『ガンダムビルドファイターズ』メカデザイン(いずれも共同)

*13:コードギアス 反逆のルルーシュ』『ガンダムビルドファイターズ』『アルドノア・ゼロメカニックデザイン(いずれも共同)

*14:甲鉄城のカバネリ』デザインワークス、『ガンダムビルドダイバーズ』『ガンダム Gのレコンギスタメカニックデザイン(後者二つは共同)

*15:騒ぐ割に街や人々の様子からそれほど切迫した印象を受けない

*16:伝統の陶器作りを大切にするヒロイン、敵に情けをかける軍人……

*17:ちなみに奥さんは「サンデーうぇぶり」にて百合漫画『はなにあらし』を連載中の古鉢るか

*18:夏休み、ミネラルショーの回

*19:大賞は該当作品なし

*20:死亡フラグの回収が早すぎる

*21:なんですか、それ

*22:K&Kデザインは制作協力としてもクレジットされていて、2D作画回も担当したそう

*23:佐藤二朗とか東海オンエアとか……

*24:個人的には嫌いじゃないけど

*25:CV沢城みゆきなのが個人的にはポイント高い

*26:「厳しい」と「パワハラ」の区別がしっかりついていないの、ものすごく失礼だけど”アニメ業界”って感じがする

*27:これで「いちかわギガえもん」と読むそう

*28:最後の戦いで腕だけゴリラになってたたかってはいたけど……

*29:うたプリ』の第3期

*30:アイドルもの、アイドル同士で競い合う、伝説のアイドルが物語開始時点で故人、主人公のライバルがその妹、そして心臓移植……

*31:アイプラが2019年11月、セレプロが12月

*32:自分らで全員不合格にしたくせにどの面下げて戻ってこいつってんの?

*33:今期だと『無職転生』2クール目のEDも手がけています

*34:第3期

*35:当初は2021年リリース予定でしたが、クオリティ向上のため延期されました(ソース)。

*36:時系列的には、漫画→アニメ→ゲーム

*37:これを文字で画面に出したうえでCV諏訪部順一に両方重ねて読ませる発想、すごい

*38:ちなみに本人は「製作に関わったのは4年近く前の事」とツイートしてる

*39:『俺が好きなのは妹だけど妹じゃない』の作監や二原を「七靈石」名義で担当して話題になった中国のアニメ会社

*40:公式サイトによれば、「視覚や聴覚からの刺激によって引き起こされる心地よさや、脳がぞわぞわするような感覚を引き起こす音声・動画ジャンル」

*41:1話にはポスターも出てくる

*42:3話

*43:8話の速水奨

*44:9話

*45:この手の作品に絶対いる生真面目黒髪ロング枠

*46:アージュと読む

*47:ニコニコ動画のアニメで、電話が掛かってくると湧いてくる「ピロピロピロピロ」「ゴーウィwwwwゴーウィwwwwヒカリッヘーwwww」というコメ=TE勢の元ネタ

*48:クレジット表記はPassione

*49:キモいのが苦手な人はどうだか知りませんが……

*50:原作読んでるんで大体内容は知ってるんですが

*51:前クールに続いて『ジャヒー様はくじけない!』EDを担当

*52:2003年放送のテレビシリーズ

*53:ちなみに、撮影はDIGITAL@SHAFTというシャフトの仕上げ・撮影・CG(加えて最近は美術背景もやっているらしい)をやっているところが担当していて、撮影監督も『さよなら絶望先生』『ニセコイ』『終物語』の江上怜が務めています

*54:公式サイトのクレジットは「 オー・エル・エム」のみ

*55:これによって、1971年のテレビアニメシリーズ開始時から演じていた声優は全て交代することになりました

*56:ジャングル大帝』をはじめ、1960年~70年代のテレビアニメ脚本を多数手がけ、2020年には『たかが殺人じゃないか 昭和24年の推理小説』で米澤穂信以来2人目のミステリランキング3冠を達成した御年89歳の推理作家

*57:うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』監督、最近ではオリジナルアニメ『ぶらどらぶ』で総監督・原作・シリーズ構成を手がける

*58:第1回鮎川哲也賞からデビューし、『森江春策の事件簿』『金田一耕助VS明智小五郎』シリーズがテレビドラマ化された推理作家

*59:一般小説だけでなく、ゲームブックライトノベルの執筆経験もある作家

*60:代表作に『告白』『少女』『贖罪』などがあるイヤミスの代名詞的推理作家

*61:特に押井守