あすはひのきになろう

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廃遊園地の殺人/斜線堂有紀(実業之日本社)【感想】

 

2022年11月16日読了。

 

あらすじ

失われた夢の国へようこそ
この推理、未体験ゾーン。

『楽園とは探偵の不在なり』(早川書房)で2020年ミステリランキング続々ランクイン!
新世代の旗手が紡ぐ今年度の大本命!待望の本格ミステリ長編!

プレオープン中に起きた銃乱射事件のため閉園に追い込まれたテーマパーク・イリュジオンランド。
廃墟コレクターの資産家・十嶋庵(としまいおり)はかつての夢の国を二十年ぶりに解き放つ。
狭き門をくぐり抜け、廃遊園地へと招かれた廃墟マニアのコンビニ店員・眞上永太郎(まがみえいたろう)を待っていたのは、『このイリュジオンランドは、宝を見つけたものに譲る』という十嶋からの伝言だった。
それぞれに因縁を抱えた招待客たちは宝探しをはじめるが、翌朝串刺しになった血まみれの着ぐるみが見つかる。
止まらない殺人、見つからない犯人、最後に真実を見つけ出すのは……

2021年最注目の俊英による廃墟×本格ミステリ

出典:https://www.j-n.co.jp/books/?goods_code=978-4-408-53793-1

 

 

感想

 廃墟マニアの主人公が廃遊園地の所有者に招待され、集められた他の人々ともに所有者の主催する「宝探し」になし崩し的に参加することになるが、そこで殺人事件が発生。それは過去に起こった殺人事件とも関わっていて……というお話。

 「警察を呼ばない」という選択をはじめ、納得感に欠ける強引な展開が散見され、ミステリとしての質が高いとは言い難い。明らかに不自然な動きをさせることで登場人物たちが何かを隠していることを示す演出なのはわかるが、現実では不自然な状況をいかに読者に説得的に見せるかも作者の手腕のはず。謎解きも綱渡り気味で、違和感のあるところも。例えば溺死のトリック。水圧で扉が壊れたりしないのかな、などと気になってしまった。佐義雨と主人公の初対面のシーンで知るはずのない佐義雨の名前が記されるという単純ミスにもがっくりする。キャラクターも、主人公を含め癖の強い人が多い割に魅力を感じられず、いまいち伸びきらなかった。全体的に鮮やかさに欠ける凡作にとどまってしまっており、残念でした。

 「十嶋庵」の設定の柔軟さから見るに、なんだかシリーズ化を狙っていそうですが、このクオリティのままであればやや厳しい気がします。