あすはひのきになろう

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死なないセレンの昼と夜 ―世界の終わり、旅する吸血鬼―/早見慎司(電撃文庫)【感想】

 

2021年12月21日読了。

 

あらすじ

はるか遠い未来、人類の黄昏――ヒトの終わりに付き添う、吸血鬼の物語。

世界が滅びてから、もうずいぶんと経った。
だが、干上がり、荒れ果てた大地にへばりついて、どっこいヒトは生きている。
そしてまた、ヒトではないものも――
だからあなたも、もしかすると目にすることがあるかもしれない。
荒野にサイドカーで現れる、オールドファッションなコーヒー屋台と、それを引っ張る、お気楽に退屈な永遠を生きている「吸血鬼(ノスフェラトゥ)」を――。

「一杯やってく? 話くらいは聞くけどさ、面倒ごとはごめんだよ?」

それは不死の少女が黄昏の時代に語り継ぐ、ご機嫌でお気楽な、ヒトの終わりの物語。

出典:https://dengekibunko.jp/product/322106001060.html

 

 

感想

 雨が全く降らなくなり、海も川も干上がった世界を一人旅する吸血鬼の主人公が、旅先で出会った人々と交流していく短編集です。定期的に湧いてくるポストポカリプスもののひとつで、雰囲気は良く、読みやすいものの、ただそれだけという感も否めません。

 各話とも一定のギミック≒どんでん返しは仕込まれているのですが、いずれも強く惹きつけられるほどの魅力は感じられませんでした。基本的に人ならざる存在である主人公が割と一存で気に入った人間を助け、気に入らない人間を殺してしまう、という流れで、あまり好みと一致しませんでした。自分の好みで人を生かし殺すというだけなら良いのですが、そこに中途半端に正義だなんだという価値観が毎回入ってきて、勧善懲悪もの一辺倒な構成になっていたのがやや自分の好みとはズレていたかな……と思います。人ならざる主人公が人っぽくなってきている、人としての価値観を身につけ始めている、という趣旨なのは分かりますが、その移行過程にあるという点が中途半端に感じられてしまったのかもしれません。また昼と夜で主人公の人格……というよりは性格?が変わるのは面白いのですが、いまいち両者の振る舞いにギャップを感じられず、もっと落差を作って欲しかった気もします。

 作品全体の空気感自体は悪くなかったのですが、いまひとつハマりきれなかった印象です。