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勇者刑に処す 懲罰勇者9004隊刑務記録/ロケット商会(電撃の新文芸)【感想】

 

2021年12月23日読了。

 

あらすじ

世界は、極悪最強の《罪人》勇者たちに託された。絶望に抗うファンタジー

 勇者刑とは、もっとも重大な刑罰である。
 大罪を犯し勇者刑に処された者は、勇者としての罰を与えられる。
 罰とは、突如として魔王軍を発生させる魔王現象の最前線で、魔物に殺されようとも蘇生され戦い続けなければならないというもの。
 数百年戦いを止めぬ狂戦士、史上最悪のコソ泥、詐欺師の政治犯、自称・国王のテロリスト、成功率ゼロの暗殺者など、全員が性格破綻者で構成される懲罰勇者部隊。
 彼らのリーダーであり、《女神殺し》の罪で自身も勇者刑に処された元聖騎士団長のザイロ・フォルバーツは、戦の最中に今まで存在を隠されていた《剣の女神》テオリッタと出会い――。
「力を貸してくれ、これから俺たちは魔王を倒す」
「その意気です。勝利の暁には頭をなでてくださいね」
 二人が契約を交わすとき、絶望に覆われた世界を変える儚くも熾烈な英雄の物語が幕を開ける。

出典:https://dengekibunko.jp/product/322103001933.html

 

 

感想

 面白かったです。「勇者」を刑罰と捉える着想が斬新で面白いですし、シリーズを貫く謎を提示しつつ、ダレることなくガンガン連戦していく展開も良い。「他人から舐められたくない」という理由から、不利を承知で弱者を救おうとする主人公の姿は好感が持てますし、その他の「勇者」もそれぞれキャラが立っていて面白い。キャラ同士の掛け合いもほどよくコミカルで、割と思い悩むところの多い主人公の一人称文体とバランスが取れているのではないかと思います。強大な力を持ちながらも人間に褒められることのみをその対価とする幼女の姿をした《女神》という存在には、趣味の悪さというか、露悪的に思われてやや抵抗を覚えますが、主人公自身がそこに違和感を見出しているので、そこは確信犯と捉えるべきでしょうか。

 《女神》と主人公が出会うシーンは『Fate/stay night』の士郎とセイバーの出会いを彷彿とさせますし、ラストで主人公が恐らく何らかの記憶を失ったと思われる描写からはとある魔術の禁書目録』の上条当麻を思い出します(ネタバレにつき反転)。キャラ、設定等どことなく過去作からモチーフを借用しているような点を感じつつも、全体として既視感はありません。話もこれからどんどん広げられそうですし、今後に期待したいシリーズです。