あすはひのきになろう

ライトノベルを中心にいろんなコンテンツの感想を記録していきたいブログ

現実でラブコメできないとだれが決めた?【感想】

 

 2020年9月6日読了。

あらすじ

データでつくる最高の理想郷(ラブコメ)!
「ラブコメみたいな体験をしてみたい」

ライトノベルを嗜むすべてのラブコメ好きは、一度はこう思ったことがあるのではないだろうか?
ヒロインとイチャラブしたり、最高の友人達と充実した学園生活を送ったり。

だが、現実でそんな劇的なことが起こるわけもない。
義理の妹も、幼馴染も、現役アイドルなクラスメイトもミステリアスな先輩も、それどころか男の親友キャラも俺にはいない。
なら、どうするか?
自分で作り上げるしかないだろう!

ブコメに必要なのは、データ分析と反復練習! そして――

第14回小学館ライトノベル大賞、優秀賞受賞作。

ライトノベルに憧れた俺――長坂耕平(ながさかこうへい)が、都合良くいかない現実をラブコメ色に染め上げる!

出典:https://www.shogakukan.co.jp/books/09451856

受賞時の講評(漫画家・若木民喜氏)がこちら。

『ラブコメを絶対させてくれないラブコメ
こんな設定大好きです。自分も得意としてるジャンルですのでやや前のめりで評価してしまうのを許してもらいたいのですが、特に序盤は完璧な始まりでした。狂気とも言える壮大無比な計画を胸にストーリーを始める主人公への期待、その前に現れる女の子たちのかわいさ、全部が魅力的です。「どんなすごいラブコメが始まるんだろう!」とわくわくしました。
それだけに、そこからのストーリーが結構オーソドックスなラブコメが展開されたので、ちょっと「あれ?」と言う気持ちです。序盤を読んで期待した内容とはやや違った気がしました。論理的すぎるというか……。特に前半は長坂くんにもっと面白い事をしてほしかったです。

出典:https://gagagabunko.jp/grandprix/entry14_FinalResult.html

 

 

感想

 正直に言って、終盤まではあまり好みではありませんでした。主人公が調査のために執る手段が割と冗談抜きで気持ち悪いこと*1、ちょいちょい挟まれるラノベネタ(特にチラムネと友崎くんへのよいしょがすごい。応募時からこんな露骨だったんでしょうか?)に辟易したこと、ヒロインの行動原理がよく見えてこなかったことが主な理由です。一点目については、現実の男子高校生がやってたら気持ち悪いだろうなぁと思わされるとはいえ、「ラブコメを現実に実現する」ためには欠かせないものなのでまぁしょうがないとしても、二点目については僕には合わない趣向でした。他作品をネタにするラノベ古今東西あまたありますが、余程自然な文脈で無いと不自然に感じられてしまいます。一種の飛び道具的なものですし。

 一方で、着想は非常に面白かったです。「現実にラノベのようなラブコメを実現する」というメタ構造自体興味を惹かれますし、それを実現する手段が本格的なデータ収集と調査というのも(キモさは置いといて)面白い。ストーリー展開も、中盤までは登場人物紹介と調査手法の説明が多いものの、終盤、校内で不利な立場になったヒロインを救う主人公の発想とそのために明かされた彼の過去は予想外でした。「幼馴染をつくる(ネタバレにつき反転)って言葉だけ聞いても意味わからんでしょ。また先に述べた、よくわからないヒロインの行動原理も(やや説得力が弱い気はしましたが)説明されており、物語としてはかなり面白いものになっていると思います。最後の「舞台裏」で明かされる一件についても、まぁこちらはある程度予想の範囲内とはいえ、今後の展開を期待させられます。

 ただちょっと気になったのが主人公がラブコメを創造した先に何があるのかよくわからないところですね。要は彼がやりたいのは彼が描いたシナリオ通りに進む彼を主人公とした劇のようなもので、果たしてそれは本当に彼にとって楽しいものなのか。あと彼にとっての「メインヒロイン」(ヒロインとは別)も「ラブコメ適正」が高いからその役に抜擢されただけで、決して彼が恋してるわけではないっぽいんですよね。

 いずれにせよ、新しいラブコメの形として今後の展開が気になる作品に違いはありません。

*1:散々ヒロインからも言われてますが