あすはひのきになろう

ライトノベルを中心にいろんなコンテンツの感想を記録していきたいブログ

処女のまま死ぬやつなんていない、みんな世の中にやられちまうからな【感想】

 

 2021年5月11日読了。

 

あらすじ

彼女は死んだ。
そして僕らは、出会った。

ねーねーねー。高校三年生の朝は、意外な声に遮られた。狸寝入りを決め込む僕に話しかけてきた同級生、白波瀬巳緒。そして、隣の席の、綺麗な声が耳に残る少女、御堂楓。留年し、居場所がないと思った学校のはずなのに、気づけば僕の周りに輪ができていく。胸はまだ、痛む。あの笑顔を思い出す。でも、彼女の歌声が響く。ほんのり温かいユーモアと切なさが心を打つ、最旬青春小説。

出典:https://www.shinchosha.co.jp/book/180191/

 

 

感想

 キャッチーなタイトルに惹かれましたが、このタイトル自体がカート・コバーンなるアメリカのミュージシャンの発言から引用しているそうです*1。悪くない、悪くないんだけど、そこはかとない既視感が……。病、恋人の死、洋楽、バンド活動……と要素を拾うと全部どっかで見たことあるような気がしてくるんですよね……。いや、もう良いよそういうの……みたいな。ただ、本作の主眼は「恋人の死を乗り越えること」にあるので完全な同系先行作品の二番煎じって感じでもないです。尖ったタイトルの割には登場人物はみんな良い奴だし、物語全体に「優しい世界」的雰囲気がありました。性別を誤認させたりとか死者から届く手紙の種明かしとか、ギミックも悪くないです。ですが、今一歩刺さる部分に描けていたのも確かです。シーン一つ一つとか、台詞一つ一つは良いのですが、それらを結びつける作品全体を貫くテーマというか、軸が読み取れなかったというのが個人的には大きいかなと思います。結局、前を向くこと、人と関わることの大切さ的なところでまとめてしまっていいんでしょうか。

 というか、あらすじで和久井だけ省かれてるの酷くない?明らかに美少女二人を目立たせようという意図的なものでしょ。そういう振る舞い、作中人物が一番嫌いそうだけど。

*1:“Nobody dies a virgin… Life fucks us all.”の訳らしい(リンク)。初出まではさすがに追えなかった