あすはひのきになろう

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春夏秋冬代行者 春の舞 上/下【感想】

 

上巻2021年9月8日読了。

下巻2021年9月9日読了。

 

あらすじ

ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の暁 佳奈が贈る、四季の物語。

「春は――無事、此処に、います」
 世界には冬しか季節がなく、冬は孤独に耐えかねて生命を削り春を創った。やがて大地の願いにより夏と秋も誕生し、四季が完成した。この季節の巡り変わりを人の子が担うことになり、役目を果たす者は“四季の代行者”と呼ばれた――。
 いま一人の少女神が胸に使命感を抱き、立ち上がろうとしている。四季の神より賜った季節は『春』。母より授かりし名は「雛菊」。十年前消えたこの国の春だ。雛菊は苦難を乗り越え現人神として復帰した。我が身を拐かし長きに亘り屈辱を与えた者達と戦うべく従者の少女と共に歩き出す。彼女の心の奥底には、神話の如く、冬への恋慕が存在していた。
 暁 佳奈が贈る、季節を世に顕現する役割を持つ現人神達の物語。此処に開幕。

出典:https://dengekibunko.jp/product/syunkasyuuto/322009000013.html

ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の暁 佳奈が贈る、四季の物語。

「独りにしないで。お願い帰ってきて」
 世界には冬しか季節がなく、冬は孤独に耐えかねて生命を削り春を創った。やがて大地の願いにより夏と秋も誕生し、四季が完成した。この季節の巡り変わりを人の子が担うことになり、役目を果たす者は“四季の代行者”と呼ばれた――。
 『春』の少女神雛菊には生涯の忠誠を誓う剣士が居た。名を「さくら」。職位は代行者護衛官。愛する主を拐かした者へ、悲劇を傍観していた者へ、自分達を傷つけた全ての者に復讐すべく刀を抜く。主を守って死ぬと決めた。だからもう迷わない。師と仰いだ男への恋慕は捨てた。これより先は、覚悟ある者だけが進める戦場なり。いざや、春の舞を踊ろうぞ。
 暁 佳奈が贈る、春を世に顕現する役割を持つ少女神の物語。堂々完結。

出典:https://dengekibunko.jp/product/syunkasyuuto/322012000370.html

 

 

感想

 上下巻あわせて900ページほどあるにもかかわらず、読者を作品の世界観に引き込むリーダビリティの高さと、ページを繰る手を止めさせない演出の上手さはさすがと言わざるを得ません。特にさりげなくも端正な筆致は他作と一線を画しており、「四季」を題材とする情景の描写が重要になる世界観と相まって、本作の魅力を十二分に引き出していると思います。キャラ造形やそれぞれの関係性もシンプルゆえに、それぞれの方向に一途な性格が強調されているように感じられ、感情移入しやすくなっているの巧みだと思います。

 そうした高い完成度を前提とした話ではありますが、話の展開が基本的に「警備が無能」を原因として進んでいくのはいかがなものかと思われますし、下巻では複数箇所で同時に話が進行するためとはいえ、「ちょっとここで時系列を整理しよう」が複数回挟まれると個人的にはテンポが削がれる感じがしました。また、出生ゆえに歪な性格を持つに至ったテロリスト側の掘り下げも紙幅を割いている割には今巻では不十分ですし、またいざ相対してみるとポンコツ感が強い。

 面白いがゆえに惜しい点も目立つ、といった作品でした。続刊刊行も決定しているようで、期待して待ちたいと思います。