あすはひのきになろう

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吸血鬼に天国はない(3)【感想】

 

2021年9月14日読了。

 

あらすじ

監獄から抜け出した『死神』。死の匂いが充ちる街でルーミーたちは……。

「お兄ちゃんも真面目に生きて、天国を目指そうって気になってきたんですか?」
 個人でやっていた運び屋を、会社として運営し始めて早一月。恋人のルーミー、そして社員として雇い入れたバーズアイ姉妹たちとともに仕事を回す日々。経営は苦しいながらもシーモアは、情報屋のフランから「真面目」とからかわれるような幸せに浸っていた。
 だがある日シーモアのもとに捜査官から、ルーミーのもとに殺人株式会社から、脱獄した『死神』の捕獲・討伐に協力するようそれぞれ秘密裡に依頼が入る。
 一方、『死神』の手による連続殺人事件が巷を騒がせるようになり、街は徐々に無秩序がはびこるようになっていた。はからずも同時期、街には新たなる怪異が産声を上げようとしていて……。

出典:https://dengekibunko.jp/product/vampire_heaven/321910000141.html

 

 

感想

 結局じゃあ「死神」が脱獄した理由はなんなんだよ、とか、設定に微妙に引っかかるところがないわけではないですが、総じて非常に僕の好みに合致しており、大変面白い作品です。展開のドラマチックさはエンタメ作品として一級品で、白眉となるシーンは、見開きイラストの効果も相まって、その情景を脳裏に描かせる高い筆力を感じさせます。1巻でも言った気がしますけど、なんというか、本作は非常に映画的なんですよ。いや、そんなに映画に詳しいわけじゃないんですけど。全てのシーンが絵になる、というのがより適しているかもしれません。あらゆる描写が該当巻を貫くテーマに収束していく美しい構成からも、そうした印象を受けます。

あるいは、これを愛と呼ぶとして。(p.294,296)

 世界観とテーマが高いクオリティで融合した、傑作だと思います。