あすはひのきになろう

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竜殺しのブリュンヒルド/東崎惟子(電撃文庫)【感想】

 

2022年7月10日読了。

 

あらすじ

愛が、二人を引き裂いた。

 竜殺しの英雄、シギベルト率いるノーヴェルラント帝国軍。伝説の島「エデン」の攻略に挑む彼らは、島を護る竜の返り討ちに遭い、幾度も殲滅された。
 エデンの海岸に取り残され、偶然か必然か――生きのびたシギベルトの娘ブリュンヒルド。竜は幼い彼女を救い、娘のように育てた。一人と一匹は、愛し、愛された。
 しかし十三年後、シギベルトの放つ大砲は遂に竜の命を奪い、英雄の娘ブリュンヒルドをも帝国に「奪還」した。
神の国で再会したければ、他人を憎んではならないよ。』
 復讐に燃えるブリュンヒルドの胸に去来するのは、正しさと赦しを望んだ竜の教え。従うべくは、愛した人の言葉か、滾り続ける愛そのものか――。
 第28回電撃小説大賞《銀賞》受賞の本格ファンタジー、ここに開幕!

出典:https://dengekibunko.jp/product/ryugoroshi_brunhild/322110000036.html

 

 

第28回電撃小説大賞《銀賞》受賞作品。受賞時のタイトルは『黄昏(たそがれ)のブリュンヒルド』。受賞時の選評はこちら

 

感想

 文句なしに面白かったです。明らかに暁佳奈の影響を受けてるんですが、また違ったベクトルで感情を揺さぶる描写が抜群に上手い。ダークサイドの暁佳奈とでも言うべき作風で、同じ「愛」をテーマにしながらも、倫理や友情、愛する相手の気持ちさえも超えてその身を突き動かす衝動としてのそれの側面を描き、妥協することなくきちんと物語を閉じた点がとても素晴らしかったです。『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』が一つの愛の物語であったのと同じく、本作もまた愛の物語であったと言えるでしょう。明確に誰かの影響を受けながらも二番煎じにならず、見事に換骨奪胎している点は高く評価されるべきだと思います。過剰な語りを排した必要最低限の描写も、やや情緒に不足すると見る向きもあるでしょうが、このストーリーには良く馴染んでいたのではないかと思います。この物語に、華美な修飾語は不要でしょう。

 IFのストーリーを描いた特典SSも切なかった。これが本編だったらなぁと思いつつも、「でも、そうはならなかった」ってやつですね……。こういう、たった4Pで的確に刺してくることがあるから、できる限り特典ペーパー集めたいんですよね。

 久しぶりに傑作と呼べる作品に出会え、大変嬉しかったです。この作者さんがこれからどのような物語を紡いでいくのか、今から楽しみでなりません。