あすはひのきになろう

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86―エイティシックス―Ep.9 ―ヴァルキリィ・ハズ・ランデッド―/安里アサト(電撃文庫)【感想】

 

2022年6月25日読了。

 

あらすじ

彼らが「最期の派遣先」で見るものは――アニメ化決定の人気作、急展開!

 犠牲は――大きかった。〈電磁砲艦型〉との戦いは、セオの負傷はもちろん、幾人もの仲間の命をその荒波で飲み込んだ。
 シャナ。シデンの隊「ブリジンガメン」副長だった彼女も、その一人であった。復讐を誓うシデン、そしてシン行方不明の報に動揺して狙撃できず、シャナ死亡の遠因となったクレナは、平静を失う。
 しかし、戦況は少年少女らを慮ることはない。〈電磁砲艦型〉の逃亡先――現在交信可能な最後の国家・ノイリャナルセ聖教国。レギオンの脅威と戦う同胞でありながら、ヴィーカたち連合王国や、連邦上層部すら警戒する謎の国家に、シンたちは足を踏み入れる……!
 機動打撃群・派遣作戦最終盤のEp.9!
“敵を撃てなければ、
 兵でいることはできない。”

出典:https://dengekibunko.jp/product/86/322004000032.html

 

 

感想

 なんか半分くらいまで読んだ時、「なんか上手くいきすぎてない……?」と思ったら案の定だった。ミルメコレオ連隊と聖教国の戦闘とか、なかなかの胸糞悪さでしたね。軍人としては連隊が正しいんですけど、対人戦闘に忌避感のあるエイティシックスたちとは溝ができそうですよね。ミチヒとかも今巻のことが後々トラウマになりそう……。ヒェルナの境遇には同情しますが、子どもとはいえ思想もやり方も稚拙だし、ちょっとシチュエーション優先で話が進んでしまった気はしますね。

 前巻でセオが負傷し、どうなるかと思ったんですが、ショックを受けてはいるものの、割と平静で、むしろポカやったクレナの方がグラついていた巻でした。エイティシックス5人組のなかでも一番戦争が終わったあとのことに向き合うことを躊躇ってきていたクレナが、シンへの気持ちを含めてひとつ区切りを付けられたのは良かったと思います。大分引っ張ったなという気もしますが。セオは主要登場人物たちと離れてしまったこともあり、なんかこのままフェードアウトしていきそうな気配もありますが、どうなるんだろう。そう、や~~~っとレーナの返事も聞けましたね。巻頭イラストにもあったけど、返事のシーンの地の文良かったですね。

 死が二人を分かつまで?

 そんな期限つきの幸福は望まない。死なんてそこら中に、小石みたいにごろごろ転がっているこの戦場で、そんな弱々しい願いでは一瞬後には蹴散らされてしまう。

 死にも二人を、分かたせない。(p.74)

 アンジュもダスティンくんにちょっとずつ心を開こうとしてるし、全体的に以前にも増して「戦後」に焦点があてられていたように感じます。実際戦争終結に向けかなり道筋が開いてきていて、引き延ばしがなければあと数巻で完結しそうな勢い。ただ次巻は短編集みたいですね。