あすはひのきになろう

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ひとりぼっちのソユーズ 上/下/七瀬夏扉(主婦の友社)【感想】

 

上巻 2022年6月1日読了。

下巻 2022年6月4日読了。

 

あらすじ

「僕」は幼い頃にユーリヤという女の子と出会う。彼女が僕を「スプートニク」と呼んだ日から、僕は彼女の衛星になり、まるで双子のように一緒に過ごす。ユーリヤの夢は宇宙飛行士として月に行くこと。月を目指していたのは、争いや国境のない世界に憧れていたからだ。やがてスプートニクも、宇宙飛行士になって二人で月に立つことを夢見るようになった。だが、中学生になると、二人の心は離れてしまい、国境線に背を向けるように別々に歩き出した。そして、高校受験を控えた満月の夜――二人の心はまた通じあった。この日から、スプートニクの長い旅がはじまる。月までの距離384,400キロメートルを遥かに超えてユーリヤと再会するという旅が。スプートニクは宇宙飛行士を目指して走り続けた。二人は何度も離れ離れになり、何度も再会した。種子島で、星の街で、インドネシアで、月面で、そして――。

出典:http://shufunotomo.hondana.jp/book/b589627.html

ソーネチカとも心が離れてしまったスプートニクは地球に降りる。だが、彼女に再び会うために、また月を目指す決意をする。二人は離れ離れになりながらも、月に、地球に、思いを馳せた。そしてスプートニクが再び月に上がると、そこに待っていたのは思い描いていたものとは違っていた。月は発展し続け、やがて人類の生活の場になった。ある日スプートニクは月面に宇宙望遠鏡を設置し、遠くの宇宙に未知のブラックホールを発見する。そのブラックホールからは有意な信号が発せられており、それは人類へのメッセージだった。そのメッセージの内容を解析して、スプートニクはある決意をするのだが――。

出典:http://shufunotomo.hondana.jp/book/b589629.html

 

 

感想

 個人的にはセンチメンタルすぎてちょっと……って感じでした。主人公が少年期から老年期までずっと一貫してジュブナイル口調なのもいまいち合わず。上下巻とも妙に分厚く、その割に似たような回想やほぼ同意だったり、引き写しだったりの文章が多いので、ページ数の割に「読んだ」って感じがしない。確かにWebで週一とかで追ってる読者にとっては回想も過去話の文章の繰り返しもありがたいかもしれませんが、書籍として刊行するなら、無駄な文章や描写は削ぎ落としてもっとスリムにすることもできたのではないかと思ってしまいました。序盤に出てきた陸上部の先輩とか、最後まで読むとそこまで重要じゃないし、別にいなくても良くない?とか思っちゃったりしました。

 上巻ではユーリヤとソーネチカという二人のヒロインが登場し、主人公が月を目指す姿が描かれます。ある程度描写が厚いので、二人のヒロインに魅力を感じなかったわけではないですが、ただ物語の盛り上がりというか、見所はどこかと言われると首をひねってしまいます。下巻に入って突然ループものが始まり、ようやくエンジンがかかってきたかと思うと辿り着いたヒロインによって宇宙をめぐる壮大な真実が明かされ、何やら煙に巻かれたような気分で終わってしまいました。どうもラストは先に刊行されたものとは変わっているようです。

 ひたすら叙情的な主人公の語り口や、「~だわ」「~のよ」「~わね?」みたいなヒロインのステレオタイプな女口調、宇宙にまつわるロマンチックな歌、「北方四島を賭ける」「you copy?」「i copy.」といった繰り返される表現、ここらへんが好みと合致するならば、本作を気に入る可能性は大いにあります。なんか色々SFのオマージュも潜ませていたようですが、それよりも冗長すぎる物語が気になり、あまりのめり込めなかった作品でした。