あすはひのきになろう

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死んでいる私と、私みたいな人たちの声/大前粟生(河出書房新社)【感想】

 

2022年11月5日読了。

 

あらすじ

暴力から逃れられない運命なんて、あってたまるか。 恋人からのDVで命を落とし幽霊になった窓子(まどこ)と、高校生の彩姫(あやき)。最凶コンビが悪しき男たちに天誅を下していくが――。

「救いたい」思いが連鎖し走り出す!
世にも奇妙で愛おしい、怒りの幽霊ヒーロー小説

とんでもない、途方もない、救いの物語。
私たちは怨霊である。——松浦だるま(漫画家)

出典:https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309030555/

 

 

感想

 二人称を使い読者を当事者に引きずり込む表現が巧みで、DV被害に遭う女性の心理描写にも説得感がある。時空を超えて加害男性に暴力を振るう幽霊、という着想にも面白さを感じる。窓子と彩姫の互いに執着する関係も良い。一方で、これだけの技巧を持ちながら、加害暴力を上回る暴力で報復するという「天誅」の下し方には、どうしても安っぽさとやるせなさを覚えてしまいます。二編目では窓子の持つ超常的な力といかに向き合うかという視点が加えられていることから、悪い男をボコボコにしてヨシ!という姿勢を単純に肯定しているわけではないでしょうが、本作の時点ではとりあえず男をボコボコにして溜飲を下げるというところがハイライトになってしまっている点に限界を感じます。もちろん、そうした振る舞いもある種の実践的な救済ではあるでしょうが、その延長線が問題の根本的な解決にはつながるとは思えないのです。

 感想漁ってたら『ニキ』の夏木志朋さんの書評もあったので、参考までに。

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